
世界のデータセンターが使う電力は、2025年に約485TWhでした。前の年より17%増えています。
国際エネルギー機関(IEA)が2026年4月16日に出した報告書は、2030年には約950TWhへ、ほぼ倍になると見込んでいます。世界の電力需要の約3%にあたる規模です。
データセンターはこれまで、意識せずにすむ裏方の施設でした。
それが生成AIの広がりとともに、電気料金、立地、規制の話として表に出てきています。
日本でも制度が動きました。
2026年4月から、データセンターの事業者は電力の使い方の効率(PUE)を自社のホームページで公表することになり、2029年度以降に新しく作るデータセンターには、PUE1.3以下という基準がかかります。
この記事では、データセンターの基本を押さえたうえで、AIで電力が増える理由と、日本の新しいルールが利用者に何を意味するのかを整理します。
この記事でわかること
先に結論をまとめます。知りたい項目から読んでください。
| 知りたいこと | 結論 | 詳しくは |
|---|---|---|
| データセンターとは何か | サーバーを止めずに動かすための電源・冷却・回線・警備をそろえた施設 | 基本 |
| クラウドとの違いは | 比べる軸が違う。クラウドの実体は、どこかのデータセンターのサーバー | クラウドとの違い |
| AIで電力はどれだけ増えるか | 2025年485TWh → 2030年約950TWh。AI向けの施設は3倍に | 電力 |
| 日本では何が変わったか | 2026年4月からPUEなどの公表、2029年度以降の新設にPUE1.3以下 | 新ルール |
| 利用者にとっての意味は | 施設の効率が比べられるようになる。選ぶ基準が1つ増える | 新ルール |
| これからどうなるか | 冷やし方、立地、電源の確保が変わっていく | これから |
データセンターとは:止まらないための施設
データセンターとは、サーバーやネットワークの機器を置き、止めずに動かし続けるための施設です。
企業のシステムも、動画の配信も、生成AIへの問いかけも、どこかのデータセンターの中のサーバーで処理されています。
サーバーを止めないためには、電源、温度、通信回線、物理的な安全を、普通のオフィスでは難しい水準で管理する必要があります。
「クラウドとは、他人のコンピューターである」という言い方があります。より正確には、他人のデータセンターの中にあるコンピューターです。
設備は「1つ欠けても止まらない」ように作る
| 設備 | 役割 | 止まらないための工夫 |
|---|---|---|
| ラック | サーバーや機器を収める棚 | 利用者はラック単位・区画単位で借りる |
| 電源 | 停電しても電力を絶やさない | UPS(無停電電源装置)と自家発電の二段構え |
| 冷却 | 機器の熱を取り除く | 冷たい空気と熱い空気の通り道を分ける。液体で冷やす方式も |
| 回線 | 外との通信を支える | 複数の経路を用意する |
| 安全 | 侵入と火災から守る | 入退館の管理、監視カメラ、機器を傷めないガスでの消火 |
電源がデータセンターの生命線です。停電の直後はUPSが電力をつなぎ、停電が長引けば自家発電に切り替えます。燃料の補給まで手配している施設もあります。
冷却は、AIでいちばん設計が変わった部分です。AIの計算に使うGPU(画像処理装置)は、従来のサーバーよりはるかに多くの熱を出します。空気で冷やす方式に加え、液体で直接冷やす方式の採用が進んでいます。
種類:借り方と規模で分かれる
| ハウジング(コロケーション) | ホスティング | |
|---|---|---|
| 借りるもの | 施設の空間と設備 | サーバーそのもの |
| サーバーの持ち主 | 利用者 | 事業者 |
| 向いている企業 | 機器を自分で選び、管理したい | 管理を任せて手軽に始めたい |
規模で見ると、大手のクラウド事業者が運営するハイパースケールデータセンター(超大規模施設)と、利用者の近くに置く小さなエッジデータセンターがあります。
AI向けの投資は、主に前者に集まっています。後者は、通信の遅れを抑えたい自動運転や工場の制御のような用途で使われます。2つは競合せず、役割を分け合っています。
データセンターとクラウドの違い
2つは対立するものではありません。比べる軸が違います。
| データセンター | クラウド | |
|---|---|---|
| 実体 | 物理的な施設 | インターネット越しに使うサービス |
| 提供するもの | 建物・電源・冷却・回線 | 計算の能力・保存の領域・各種の機能 |
| 場所 | 意識する | 意識しない |
| 増やすとき | 機器の設置など、物理的な作業が要る | 設定の変更ですぐ |
「クラウドに移ったからデータセンターは必要ない」のではなく、「自社で借りる施設から、事業者が運営する施設に移った」というのが正しい理解です。
クラウドを使っていても、データがどの国の施設で保管・処理されるかは、個人情報の扱いの面で確かめる必要があります。
企業がデータセンターやクラウドを選ぶときの6つの観点
これまでの5つに、2026年から「電力の効率」が加わりました。
| 観点 | 確かめること |
|---|---|
| 信頼性の水準 | 設備の備えの段階を示す「ティア」の区分。止まってよい時間が、自社の求める水準に見合うか |
| 立地 | 地震や水害のリスクが低いか。複数の拠点から行き来しやすいか |
| 回線 | 速く安定しているか。複数の経路があるか |
| 安全と運用の体制 | 入退館の管理の厳しさ。トラブルのとき、どこまで支援を受けられるか |
| 増やしやすさ | 場所と電力を増やせるか。契約の条件は柔軟か |
| 電力の効率(PUE) | 2026年4月から公表が始まった。施設どうしを比べる材料になる |
自社でサーバーを抱える場合(オンプレミス)と比べると、データセンターを使う利点は、止まらない電源と冷却、地震や火災への備え、24時間の監視、設備の保守を任せられること、事業の伸びに合わせて増やせることです。
逆に言えば、これらを自社で用意するのが難しい企業ほど、データセンターやクラウドを使う意味が大きくなります。
クラウドを使う場合も、データがどの地域(リージョン)の施設で処理されるかは、契約や設定で選べることが多くあります。
個人情報を扱う業務では、選んだリージョンを記録しておくと、あとで説明を求められたときに困りません。
AIで電力はどれだけ増えるのか
IEAの最新の見通し(2026年4月)
IEAは2026年4月16日に報告書「Key Questions on Energy and AI」を出しました。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 2025年のデータセンターの電力消費 | 約485TWh(前年比17%増) |
| AI向けの施設の電力消費の伸び(2025年) | 50% |
| 2030年の見通し | 約950TWh(2025年のほぼ2倍) |
| 2030年に世界の電力需要に占める割合 | 約3% |
| AI向けの施設(2025〜2030年) | 3倍に増える |

1年前の報告書「Energy and AI」(2025年4月)では、2024年の消費を約415TWh(世界の電力消費の約1.5%)、2030年を約945TWhと見ていました。
1年で、出発点の数字が上がり、見通しの大きさはほぼ変わっていないことになります。
この数字をどう読むか
「AIが電気を食い尽くす」という読み方は正確ではありません。
2030年でも、データセンターが世界の電力需要に占めるのは約3%です。
ただし、偏りがあります。
2025年4月の報告書では、2024年の消費の地域別の内訳は米国45%、中国25%、欧州15%でした。そして、世界全体では電力需要の伸びの約10分の1にとどまる一方、先進国に限ると伸びの20%以上をデータセンターが占めると見ていました。
世界全体では一部でも、先進国では無視できない大きさ、というのが実態です。
同じ報告書は、2035年に向けて、増える需要の約半分を再生可能エネルギーがまかない、天然ガスが175TWh、原子力も同じくらいを加えると見込んでいます。
2026年4月の報告書も、2030年までに米国を中心に15〜27GWの天然ガスの発電設備が、データセンターの敷地で使われる可能性があると書いています。
データセンターの立地は、通信の問題から、電源をどう確保するかの問題へと重心が移っています。
日本の電力需要は増える方向へ
日本の電力需要は、過去20年ほど、省エネと人口減少で減ってきました。
資源エネルギー庁は、DXやGXの進展によって、これからは電力需要が増える見込みだと説明しています。
需要が減ってきた国では、増える分の影響が相対的に大きく出ます。日本の新しいルールは、この流れの中で作られました。
→ AIの「推論」とは|5段階でわかる用語解説
日本の新ルール:2026年4月からPUEの公表と基準
PUEとは
PUE(Power Usage Effectiveness)は、データセンターの電力の使い方の効率を示す数字です。
PUE = 施設全体で使う電力 ÷ IT機器が使う電力
1.0がいちばん良く、1に近いほど冷却や照明などの「IT機器以外」に使う電力が少ないことを表します。
PUEが2.0なら、サーバーを動かすのと同じだけの電力を冷却などに使っていることになります。

2026年4月から始まった3つの措置
資源エネルギー庁によると、省エネ・非化石転換法にもとづいて、次の3つの措置が始まりました。
| 措置 | 中身 |
|---|---|
| 公表 | 電気の使用量、PUE、エネルギーの消費原単位などの実績と目標を、報告を出した年度の3月31日までに事業者のホームページで公表する |
| 基準 | 2029年度以降に新しく作るデータセンターは、PUE1.3以下。稼働開始から2年が経過した時点の翌年度以降 |
| 対象の拡大 | 2026年度から、ビルの一部を借りて運営する「テナント型」のデータセンターも、PUEを算定する対象に入る |
これまでの目標は「2030年度までにPUE1.4以下」でした。新しく作る施設には、それより厳しい1.3以下が課されます。

利用者にとっての意味
1. 施設の効率を比べられるようになる。
これまで各社の効率は外から見えませんでした。公表が求められることで、データセンターやクラウドを選ぶときに、PUEを比べられるようになります。
2. 新しく作るハードルが上がる。
PUE1.3以下は、従来の空気で冷やす方式だけでは簡単ではありません。液体での冷却や、外の冷たい空気を使う設計が事実上の前提になり、建設の費用に響きます。
3. 古い施設との差が見えるようになる。
古い施設ほどPUEは高くなりがちです。差が見えることで、移転や更新を考える材料になります。
これから変わること
| 変わること | 中身 |
|---|---|
| 冷やし方 | PUEの基準とGPUの発熱が同じ方向を向いている。液体での冷却と、寒い地域の外気の利用が広がる |
| 立地 | 都市部への集中から、寒い地域や電源に近い地域へ。国内では北海道や東北が注目されている |
| エッジとの組み合わせ | すぐに応答が要る処理は、利用者の近くで行う構成が増える |
| 電源 | 立地を決める条件が、通信から電源の確保へ移っている |
AIを使う量が増えるほど、その裏側の電力と冷却の話は、利用者にとっても他人事ではなくなっていきます。
データセンターに関わる企業の株価の話題は、こちらで扱っています。
→ AI関連株の見込みは?今後の見通しと注目分野、バブル論争とリスクをわかりやすく解説【2026年版】
このサイトが動いているサーバーの、データセンターを調べてみた
私は元システムエンジニアで、いまはAI分野の記事を書く仕事をしています。
2026年10月14日、このサイトを置いているレンタルサーバーの事業者のサイトで、データセンターの情報を探しました。
北海道にあるデータセンターは、2015年度のPUE約1.11という情報が掲載されていました。
およそ10年前の数値がプレスリリースとして出ていましたが、その後の情報は見つかりませんでした。
また、全国に数カ所データセンターがあるようですが、自分のサイトのサーバーがその施設にあるのかどうかは、契約の画面からは分かりませんでした。FAQで確認したところ、セキュリティ上詳しい場所は公表していないということです。
公表が始まったことで、裏側を確かめる手がかりは1つ増えましたが、利用者から見える範囲はまだ限られています。
よくある質問(FAQ)
Q. データセンターとサーバールームは何が違いますか。
A. 規模と設備の水準が違います。サーバールームは自社のオフィスの一室で機器を動かすもので、電源や冷却の備えは限られます。データセンターは、無停電電源装置、自家発電、複数の回線、24時間の監視を備えた専用の施設です。
Q. クラウドを使っていれば、データセンターは関係ありませんか。
A. 関係あります。クラウドの実体は、事業者が運営するデータセンターです。データがどの国の施設で保管・処理されるかは、個人情報の扱いの面でも確かめる必要があります。
Q. AIでデータセンターの電力はどれくらい増えますか。
A. IEAの2026年4月の報告書によると、世界のデータセンターの電力消費は2025年の約485TWhから、2030年には約950TWhへとほぼ倍になる見通しです。それでも世界の電力需要に占める割合は約3%です。AI向けの施設に限ると、2030年までに3倍に増えると見込まれています。
Q. PUEはどのくらいの値が良いのですか。
A. 1.0に近いほど効率的です。日本では「2030年度までにPUE1.4以下」という目標があり、2029年度以降に新しく作るデータセンターには、稼働開始から2年が経過した時点の翌年度以降からPUE1.3以下が求められます。
Q. PUEは、どこで見られますか。
A. 2026年4月から、対象の事業者は、PUEなどの実績と目標を、報告を出した年度の3月31日までに自社のホームページで公表することになりました。事業者のサイトで確かめられるようになっていきます。
Q. 日本のデータセンターは足りているのですか。
A. 需要は増える見込みです。日本の電力需要は過去20年ほど減ってきましたが、資源エネルギー庁は、DXやGXの進展で増える見込みだと説明しています。立地を決めるうえでは、電力をどう確保するかが制約になりつつあります。
Q. ハウジングとホスティング、どちらを選ぶべきですか。
A. 機器を自分で選んで管理したいならハウジング(コロケーション)、機器の購入と運用の手間を省きたいならホスティングです。いまは、クラウドを使うという選択肢も含めて3つを比べるのが現実的です。
まとめ
データセンターは、電源・冷却・回線・安全を二重三重に備え、サーバーを止めずに動かすための施設です。クラウドの実体も、どこかのデータセンターです。
世界のデータセンターの電力消費は、2025年の約485TWhから2030年には約950TWhへとほぼ倍になる見通しで、AI向けの施設は3倍に増えると見込まれています。
世界の電力に占める割合は約3%ですが、先進国では電力需要の伸びに占める割合が大きく、立地の条件は電源の確保へと移っています。
日本では2026年4月から、PUEなどの公表が始まり、2029年度以降に新しく作る施設にはPUE1.3以下の基準がかかります。
利用者にとっては、施設の効率が比べられるようになるという変化です。
次に読む
→ AIの「推論」とは|5段階でわかる用語解説
AIに問いかけるたびにデータセンターで何が計算されているかです。
→ AIの「学習」とは|5段階でわかる用語解説
大量のGPUと電力を使う、モデルを作る側の計算です。
→ AI関連株の見込みは?今後の見通しと注目分野、バブル論争とリスクをわかりやすく解説【2026年版】
データセンターへの投資が、どの分野の企業に関わるかです。
用語の全体像はこちらで確認できます。
→ 今さら聞けないAI用語30選|初心者でもニュースが読めるようになる意味と読み方
この記事を書いた人:kkazuki|AI/DX分野ブログ運営者 → 運営者情報
※数値と制度の内容は2026年10月15日時点で確認できた最新のものです。IEAの見通しと日本の制度は更新されるので、最新の情報は各公式サイトで確かめてください。
参考
2026年10月15日に確認しました。
- International Energy Agency(IEA)「Key Questions on Energy and AI」(2026年4月16日)/「Executive summary」
- International Energy Agency(IEA)「Energy and AI」(2025年4月)/「Executive summary」
- 資源エネルギー庁「増加が見込まれるデータセンターの電力需要をどうする?さらなる省エネを進める新たな制度に注目!」(2026年5月20日)

