AIに「覚えさせる」メモリ機能をどこまで使うか|移行が当たり前になった2026年の使い分け

AIと真ん中に書かれたメモリを表す回路の図

生成AIの競争は、賢さだけでなく記憶にも広がりました。

これまでは、会話を閉じると前の話は消えるのが当たり前でした。
いまは各社が覚えておく機能を備え、他社から記憶を引っ越す機能まで用意されています。

ただし、覚えさせれば便利になるとは限りません。
間違った前提を覚えられると、毎回それを前提に答えが返ってきます。
本記事では、AIの記憶の仕組みを3つの層に分けて、今日から使えるポイントを紹介します。

この記事でわかること

先に結論をまとめます。知りたい項目から読んでください。

知りたいこと結論詳しくは
そもそもなぜ必要なのか会話が終わると前提が消えるためなぜ必要か
「記憶」に何種類あるのか自動で覚える/自分で置く/作業を覚えるの3層3つの層
いま無料で使えるのは自動で覚えるメモリは無料でも使えるどこまで無料か
どこで設定するのかサービスごとに呼び名が違う。一覧で整理設定の場所
10月に何が変わったかメモリの仕組みそのものの変更はなし。覚えさせたものの置き場所が増え(ロックしたチャットなど)、別のアプリにも引き継がれ始めた。仕事用のCopilotでは履歴からの推測が始まった10月の確認
他社から引っ越せるのか引っ越せる。ただし中身を見てから引っ越し
自分で置く仕組みとの違いは覚える主体が違う。使い分けが要る使い分け
エージェントの記憶とは作業の失敗まで覚える仕組み。有料が前提3層目
覚えさせすぎるとどうなるか書き方の好みをいつまでも覚えてしまう困った実例
何を覚えさせないほうがよいか変わるもの、他人のこと、判断の結論だけ覚えさせないもの
定期的に何をすればよいか一覧を開いて読む。4手順で終わる棚卸しの手順
仕事のアカウントでは個人と法人で扱いが違う。確認が先仕事で使うとき

そもそも、なぜ記憶の仕組みが必要なのか

言語モデルは、1回のやり取りで扱える範囲が決まっています。
この範囲をコンテキストウィンドウと呼び、会話が長くなると古い部分から外れていきます。

そして、会話を閉じれば全部消えます。
新しい会話を開いた時点で、モデルは前の会話を知りません。

この制約自体は、記憶の機能があっても変わりません。
メモリは、会話のたびに毎回同じ前提を書かなくて済むように、保存しておいた内容を裏で会話に差し込む仕組みです。
範囲が広がるのではなく、毎回入れ直す手間を省いています。

ここから2つのことが言えます。

1つ目。覚えさせた内容も、会話の一部として場所を取ります。
覚えさせる量が増えるほど、本題に使える範囲が削られます。「何でも覚えさせておけば便利」とはならないのは、このためです。

2つ目。覚えた内容がどう使われたかは、見えにくいままです。
差し込まれるのは裏側なので、答えが変わった理由が記憶にあるのか指示にあるのかを、会話だけからは判断しにくくなります。
ChatGPTのように、回答の下に「ソース」を表示して、どの記憶を使ったかを示すサービスも出てきました。ただし、すべてのサービス、すべての回答で表示されるわけではありません。
記憶が原因の不具合が見つかりにくいのは、この構造によります。

メモリが会話にどう使われるかを示した模式図。1回のやり取りで扱える範囲(コンテキストウィンドウ)の大きさは変わらず、保存した内容が会話のたびに裏で差し込まれる。覚えさせる量が多いほど、本題に使える範囲が削られる。また、どう使われたかは画面から見えないので、答えが変わった理由が記憶か指示かを切り分けられない。価格やプランなど変わる数値は覚えさせない。
下の帯のように、覚えさせるほど本題に使える場所が減ります。

→ コンテキスト(文脈)とは|5段階でわかる用語解説
 一度に扱える範囲がどう決まっているのかを、レベル別に解説しています。

「記憶」を3つの層に分ける

ひとまとめに語られがちですが、性質の違うものが3つ混ざっています。

1層目:自動で覚えるメモリ

会話のなかから、覚えておくと役に立ちそうな内容をAI側が拾って保存します。
利用者は特に何もしません。気付くと覚えています。
名前、仕事、好みの文体、といったものが対象です。

2層目:自分で置く資料と指示

プロジェクト機能やカスタム指示のように、利用者が明示的に置く仕組みです。
何を置いたかが分かり、消せます。AIが勝手に増やすことはありません。

3層目:作業そのものを覚える仕組み

エージェントが自分でやった作業の記録を残し、次に活かす仕組みです。
どのやり方がうまくいき、どこで失敗したかまで蓄積します。

この3つは、覚える主体が違います。
1層目はAIが決め、2層目は自分が決め、3層目は作業の結果が決めます。
「メモリは便利」と一括りにすると、どの層の話をしているのかが混ざってしまいます。

AIの記憶を3つの層に分けた図。1層目は自動で覚えるメモリで、覚える主体はAI、無料で使える。2層目は自分で置く資料と指示で、覚える主体は自分、無料では部分的に使える。3層目は作業そのものを覚える仕組みで、覚える主体は作業の結果、無料では使えず月200ドル前後の上位プランが中心。2026年9月時点で個人が使えるのは1層目と2層目。
「メモリが便利」という話は、どの層の話かをそろえないとかみ合いません。

どこまで無料で使えるのか

2026年10月時点の目安です。

層無料で使えるか
1層目:自動で覚えるメモリ使える。主要サービスで無料プランに降りてきている
2層目:自分で置く資料と指示部分的に使える。資料の置き場所は有料の範囲が多い
3層目:作業を覚える仕組み使えない。月20ドル台の有料プランから試せるものが出てきた段階

1層目は無料になりました。
たとえばAnthropicは2026年3月2日(米国時間)に、それまでPro以上の有料プラン限定だったClaudeのメモリ機能を、無料プランを含む全プランに開放しています。

3層目は、無料では使えません。ただし、入口の価格は下がり始めています。
Perplexityが2026年6月18日に発表した「Brain」は、エージェントの作業をグラフ形式で記録し、どのやり方が効果的でどのデータ源が役に立たなかったか、利用者がどこを直したかまで蓄積する仕組みです。
発表では、一度扱ったことのある作業で回答の正確さが25%上がり、過去の文脈が要る作業のコストが13%下がったと報告されています。
ただし提供は、2026年10月時点でも月額200ドルのMaxプランと法人向けのEnterprise Maxに限られ、リサーチプレビューの扱いです。

同じ方向のものには、SpaceXAIが2026年8月11日にベータ発表した「Grok Bot」があります。
クラウド上で常時動き、人間と同じようにブラウザやアプリの画面を直接操作します。最大10分の操作を録画して見せると、その手順を作業手順(スキル)の下書きにする、という設計です。
発表当初の対象は月200ドル級の上位プランでしたが、9月時点の公式ドキュメントでは、開発ツールCursorの個人向け有料プラン(月20ドルから)すべてと、SuperGrokの各プランで使えると案内されています。

つまり、無料の範囲で個人が使えるのは1層目と2層目です。
ニュースで話題になるのは3層目ですが、試すには有料の契約が前提で、製品もまだ早い段階にあります。日常の道具として組み込むのは、もう少し様子を見てからでも遅くありません。

設定の場所とサービスごとの呼び名

同じ機能でも、サービス間で呼び名がそろっていません。
これが、調べても見つからない原因になります。

サービスよく使われる呼び名探す場所
ChatGPTメモリ(保存されたメモリ、チャット履歴の参照)設定 → パーソナライズ → メモリ
Claudeメモリ(項目は「トピック」ごと)設定 → メモリー
Geminiメモリ(以前は「過去のチャット」)設定 → パーソナル インテリジェンス → メモリ
Microsoft Copilotメモリ、個人用設定設定(チャット設定) → 個人用設定 → 保存されたメモリ

画面の名称と場所は改定で変わります。
この表は探すときの手がかりとして使い、実際の項目名は自分の画面で確認してください。

見るときの手順は、どのサービスでも共通です。

  1. 設定を開く
  2. 記憶や個人設定に関する項目を探す
  3. 保存されている内容の一覧を表示する
  4. 覚えさせる機能そのものを止める切り替えがあるかを確認する

一覧が見られないサービスは、何を覚えているかを確認する手段がないことになります。
その場合は、覚えさせる内容を自分で絞るしかありません。

自動で覚える機能は、切ることもできます。
自分で置く仕組み(プロジェクト機能やカスタム指示)だけで運用する、という選び方も成り立ちます。

2026年10月に確かめた各社のメモリ

10月23日時点で、ChatGPT・Claude・Geminiの公式のリリースノートには、10月に入ってからメモリの仕組みそのものを変えた項目は載っていません。
変わったのは、覚えさせたものが置かれる場所、それを使うアプリ、仕事で使うCopilotの側です。
この記事を公開した10月2日の時点で入れられていなかった、8〜9月の変更もあわせて並べます。

時期サービス変わったこと
2026年8月14日ChatGPT作ったあとのプロジェクトでも、メモリを「デフォルト」と「プロジェクト内のみ」で切り替えられるようになった(全プラン)
2026年8月25日Claude記憶していることが「設定 → メモリ」にトピックごとの一覧で出て、項目ごとに直したり消したりできるようになった。健康や信条などの話題は、「センシティブな話題をメモリに含める」をオンにしない限り記憶されない。個人向けのFree・Pro・Maxでは、メモリは既定でオン
2026年8月27日ChatGPT一時チャットは、既定でメモリを使わず、新しいメモリも作らない。メモリを使う一時チャットを選んでも、新しいメモリは作らない
2026年9月21日ChatGPTメモリ、パーソナライズ、データの使われ方などの説明と設定への入り口を1か所に集めた「プライバシーセンター」(Free・Go・Plus・Pro)
2026年10月1日ChatGPT服の試着機能で使う自分の写真が保存されるようになった。「設定 → パーソナライズ → 参照写真」で変更・削除できる
2026年10月20日ChatGPT選んだ会話を、通常の履歴や検索から隠せる「ロックしたチャット」。4桁のPINか端末の認証で開く。ロックしたチャットの中だけで覚えたことは、通常のチャットには引き継がれない。PINを忘れて再設定すると、ロックしたチャットとその中だけのメモリは消え、元に戻せない
2026年10月21日Claude先回りして動くエージェントのアプリ「Claude Duet」の研究プレビュー(米国のPro・Maxで順番待ち)。Claudeのアカウントのメモリ、スキル、つないだアプリをそのまま使う
2026年9月中旬〜10月下旬Microsoft 365 Copilot(法人向け)チャット履歴から好みや仕事の文脈を推測して回答に使う機能と、刷新されたメモリ設定ページが順に届く。メモリを止めている会社では止まったまま

表の中で、この記事の読み方を変えるのは3つです。

1つ目は、覚えさせたものが、メモリの一覧の外にも置かれ始めたことです。
ChatGPTの試着用の写真は、メモリとは別の「参照写真」という項目に保存されます。
プロジェクトごとのメモリも、プロジェクトの設定の側にあります。
10月20日に始まった「ロックしたチャット」も、中だけで覚えたことは通常のチャットには出てきません。
メモリの一覧だけを見ても、AIが手元に持っている自分の情報が全部見えるとは限りません。

2つ目は、何を覚えないかを、サービスの側が決め始めたことです。
Claudeは、健康や信条のような話題を、利用者がオンにしない限りメモリに入れません。
この記事の後半で書いている「覚えさせないものを先に決めておく」を、サービスの側が既定の設定として持ったことになります。
ただし、どの話題が「センシティブ」に入るかの線引きは、サービスが決めています。自分の線引きと同じとは限りません。

3つ目は、覚えさせたものが、同じ会社の別のアプリにも引き継がれ始めたことです。
Claudeの「Claude Duet」は、Claudeのアカウントのメモリをそのまま使って、先回りして動きます。
チャットのために覚えさせたことが、自分から動くエージェントの判断材料にもなる、ということです。
新しいアプリを試す前に、メモリの一覧を見ておく理由が1つ増えました。

他社からの引っ越しができるようになった

2026年3月2日(米国時間)、Claudeは他社サービスからメモリを取り込む機能も追加しました。
同じ月の下旬には、GoogleもGeminiに、ChatGPTやClaudeから記憶や会話履歴を取り込む機能を加えています。

Claudeの手順は、設定画面で移行元に渡すためのプロンプトを受け取り、それをChatGPTやGeminiで実行し、返ってきた結果をClaudeに読み込ませる、という流れです。
自動連携ではなく、利用者が手で運ぶ形になっています。
なお、Claudeのヘルプではこの取り込みを実験的な機能としており、すべてが取り込まれる保証はないと説明しています。仕事に関わる内容が優先され、それ以外の個人的な内容は外れることがあります。

この機能について、便利さより先に見ておきたい点があります。

移行元が何を覚えていたかを、この機会に初めて見ることになります。

自動で覚えるメモリは、覚えた瞬間に利用者が確認しているわけではありません。
引っ越しの手順を踏むと、蓄積された内容が一覧で目の前に出ます。
そこで「なぜこれを覚えているのか」と思う項目が出てくることがあります。

引っ越しは、中身を捨てる機会でもあります。
全部を移すのではなく、要るものだけ移すほうが、結果的に使い勝手が良くなります。

→ 生成AIに入力してよい情報とだめな情報|設定だけでは防げないこと【2026年9月】
 入力の線引きの話です。覚えられる内容にも同じ線が要ります。

1層目と2層目の使い分け

どちらか一方に寄せると、不便が出やすくなります。分けて使います。

内容置き場所理由
呼び方、扱っている分野1層目(自動メモリ)変わらないし、間違っても実害が小さい
文体や書き方の好み2層目(プロジェクトごとの指示)用途ごとに変わる。1か所に固定すると外しにくい
進行中の案件の資料2層目(自分で置く)終わったら消す必要がある
判断の基準やルール2層目理由まで含めて書き残さないと再現しない
一度きりの前提どちらにも置かないその会話のなかで伝える
変わる可能性のある数値どちらにも置かない古い数値を前提に答えられる

いちばん事故が多いのは最後の行です。

古い数値を覚えられると、そのあと何を聞いても古い前提で返ってきます。
しかも、どこで間違えたのかが会話からは見えにくくなります。
価格、プランの内容、法制度のように変わるものは、覚えさせずにその都度渡すほうが安全です。

→ ハルシネーションとは|5段階でわかる用語解説
 もっともらしい間違いが返ってくる仕組みを解説しています。記憶が絡むと発見が遅れます。

3層目が普及したとき、何が変わるか

作業の記録を覚える仕組みが個人にも降りてきたとき、いまと何が変わるのかを先に考えておきます。

変わること:同じ作業を頼み直すコストが下がります。前回どこで詰まったかを説明しなくてよくなります。

変わらないこと:何を作業として切り出すかは、依然として人間が決めます。曖昧な依頼が明確になるわけではありません。

新しく出てくる問題:どこで失敗したかまで覚えるということは、間違った成功体験も覚えるということです。たまたまうまくいった手順を最善だと学習した場合、それを外す手段が要ります。

PerplexityのBrainでは、記憶の各項目が元の作業やファイルにひもづいて表示され、ヘルプでは設定から項目を編集・削除できると案内されています。
Grok Botの公式ドキュメントも、重要な判断では記憶に頼らず、いまの情報源を確認させるよう勧めています。
記憶を持つ仕組みほど、中身を見られることと消せることが条件になります。

→ AIエージェントとは|5段階でわかる用語解説
 判断して手順を進めるAIと、決められた作業を繰り返す自動化の違いです。

覚えさせすぎて困った実例

私は元システムエンジニアで、いまはAI分野の記事を書く仕事をしています。
覚えさせすぎて困ったのは、書き方の好みを覚えられたことでした。

以前に一度、箇条書きを減らしたいと伝えたことがあります。
それが好みとして保存されていたらしく、以後は箇条書きが必要な場面でも文章で返ってくるようになりました。

一覧にしてほしいときは毎回そう指定し直すことになり、かえって手間が増えていました。

気付いたのは、指示のほうを疑ったときです。
同じ依頼を新しい会話で出しても結果が変わらないので、設定画面でメモリの一覧を開いたところ、そこに一文で残っていました。

いまは、書き方の好みを覚えさせるのをやめています。
文体は記事ごとに変えるものなので、固定されると外すほうが面倒でした。
覚えさせているのは、変わらないもの(呼び方、扱っている分野)だけに絞っています。

このことがあり、運用ルールを1つ追加しました。
「思ったのと違う答えが2回続いたら、指示ではなくメモリを見る」です。
メモリが原因の場合、指示をいくら直しても直りません。

覚えさせないものを先に決めておく

覚えさせるものを選ぶより、覚えさせないものを決めるほうが早く終わります。

1. 変わるもの

価格、プランの内容、法制度、組織の体制。
これらは覚えさせず、必要なときにその会話で渡します。

2. 他人に関すること

自分の情報を覚えさせるのと、他人の情報を覚えさせるのは別の判断です。
自分の裁量で決められるのは前者だけです。
エージェントになると、この線はさらに見えにくくなります。
米国で提供されているMetaのAIエージェント「Muse」は、利用者が会話やメールで触れた人についても記録を更新していると、米TIMEが2026年10月6日に報じました。Museを使っていない人も、その対象に入ります。

→ MetaのAIエージェント「Muse(ミューズ)」とは|日本で提供開始、できることと安全の仕組みを解説【2026年10月】
 Museが何を覚えているかと、Metaの説明をまとめています。

3. 判断の「結論」だけ

理由を書かずに結論だけ覚えさせると、前提が変わったときに外せません。
残すなら、理由もあわせて残します。

そのうえで、定期的に一覧を開いて読む日を決めてください。
自動で覚える仕組みは、放っておくと増えます。
増えたこと自体には気付けないので、見る日を決めるしかありません。

棚卸しの手順

見る日を決めても、何を見るかが決まっていないと続きません。
手順は4つです。10分ほどで終わります。

1. 一覧を上から全部読む

拾い読みをしないでください。
問題になるのは、自分が覚えさせたつもりのない項目です。
探しているものだけを見ると、それが目に入りません。

2. 「いつの情報か」で分ける

各項目について、いま書いても同じ内容になるかを考えます。
価格、契約しているプラン、担当している業務、使っている道具。
これらは変わります。変わったのに古いまま残っている項目が、いちばん害を出します。

3. 理由が思い出せない項目を消す

なぜ覚えているのか分からない項目は、消して構いません。
必要なら、また覚えさせれば済みます。
消すコストより、間違った前提で答えられるコストのほうが大きくなります。

4. 消したあとに、同じ質問をもう一度する

これを飛ばすと、直ったかどうかが分かりません。
以前におかしな答えが返ってきた質問を、新しい会話で出し直してください。
同じ答えが返るなら、原因は記憶ではなく、自分で置いた資料か指示の側にあります。

一覧の外にある「覚えさせたもの」も、同じ日に見ます。
プロジェクトごとのメモリの設定、カスタム指示、ChatGPTの試着用の写真のような保存された画像、ロックしたチャットの中だけで覚えたことは、メモリの一覧とは別の場所にあります。
ロックしたチャットを使う場合は、PINを忘れると中身ごと消えることも覚えておきます。
ChatGPTなら、2026年9月に始まったプライバシーセンターから、メモリやパーソナライズの設定へまとめてたどれます。

頻度は月に1回で足ります。
記事や資料を書く仕事で使っているなら、扱っている題材が変わったタイミングも見直しどきです。
前の題材の前提が残っていると、新しい題材で見当違いの方向へ寄っていきます。

仕事のアカウントで使うとき

個人のアカウントと法人向けのアカウントでは、記憶の扱いが変わります。
確認する点は3つです。

1. 覚えた内容が誰から見えるか

個人のメモリは自分だけのものです。
一方、チームで使う仕組みに置いた資料は、権限のある人から見えます。
自分の判断で覚えさせてよいのは、自分に関することだけという線は、ここでも変わりません。

2. 管理者側で機能を止められる場合がある

法人向けのプランでは、管理者が記憶の機能を無効にしていることがあります。
たとえばClaudeのTeam・Enterpriseプランでは、記憶を使えるかどうかを管理者が決め、有効になっていても各メンバーが自分でオンにするまでは動きません。
「使えない」と思ったときは、まだ提供されていないのではなく、設定で止められている可能性を先に確認してください。
逆の動きもあります。法人向けのMicrosoft 365 Copilotでは、2026年9月中旬から10月下旬にかけて、チャット履歴から好みや仕事の文脈を推測して回答に使う機能が順に届いています。会社がメモリを有効にしていれば、自分で何も覚えさせていなくても、使うほど推測が増えていきます。

3. 退職や契約終了のときにどうなるか

アカウントが使えなくなると、覚えさせた内容も置いた資料も、多くの場合は手元から失われます。
Claudeでは、管理者が組織全体で記憶の機能を止めると、メンバーの記憶はその時点で削除されます。
業務の手順を記憶に頼って組んでいると、引き継ぎができません。
手順そのものは、AIの外に文書として残しておく必要があります。

3つ目は、個人で使っている場合にも当てはまります。
覚えさせた内容は、契約しているあいだだけ手元にあるものだと考えて、判断の基準は自分の手元にも書き残しておくほうが安全です。

よくある質問(FAQ)

Q1. メモリ機能は無料でも使えますか。

主要サービスでは無料プランに降りてきています。Claudeは2026年3月2日(米国時間)に、それまで有料プラン限定だったメモリ機能を全プランへ開放しました。

Q2. 覚えた内容は自分で確認できますか。

多くのサービスでは設定画面から一覧を見られます。Claudeは2026年8月から記憶をトピックごとの一覧で見せ、ChatGPTはメモリの要約ページで直接直せます。個別に消すこともできます。ただし、覚えた時点で通知されるとは限らないため、自分で見に行く必要があります。プロジェクトごとの設定、保存された写真、ロックしたチャットの中だけで覚えたことのように、メモリの一覧の外にあるものもあります。

Q3. 他社から記憶を引き継げますか。

引き継げます。Claudeの場合、設定画面で受け取ったプロンプトを移行元で実行し、結果を読み込ませる手順です。自動連携ではなく手で運ぶ形です。Geminiにも、2026年3月から同様の取り込み機能があります。

Q4. メモリとプロジェクト機能は何が違いますか。

覚える主体が違います。メモリはAI側が拾って保存し、プロジェクト機能は自分が置きます。終わったら消したい資料は、後者に置いてください。

Q5. 覚えさせた内容は学習に使われますか。

覚えることと学習に使われることは別の話です。学習への利用は各サービスの設定で切り替えます。既定値はサービスごとに違います。

Q6. エージェントが作業を覚える仕組みは個人でも使えますか。

2026年10月時点では、無料では使えません。Grok Botのように月20ドル台の有料プランから試せるものが出てきた一方、PerplexityのBrainは月額200ドルのプランと法人向けに限られています。日常の道具として使う段階には、まだ来ていません。

Q7. 記憶を消したのに、前の話を前提に答えてきます。

同じ会話のなかであれば、その会話の履歴が残っています。会話を新しく開き直して確認してください。それでも変わらない場合は、プロジェクトやカスタム指示の側に残っている可能性があります。

まとめ

AIの「記憶」は3つの層に分かれています。
AIが自動で拾うメモリ、自分で置く資料と指示、そしてエージェントが作業の結果を覚える仕組みです。

2026年10月時点で、個人が無料の範囲で使えるのは1層目と2層目までです。
1層目は無料プランにも降りてきており、2層目は資料の置き場所が有料の範囲に入ることが多くなっています。3層目は、月20ドル台の有料プランから試せるものが出てきたものの、まだ早い段階です。

使い分けの基準は単純です。
変わらないものは覚えさせ、変わるものは覚えさせない。
終わったら消したい資料は、自分で置く場所に入れる。

そして、自動で覚える仕組みは放っておくと増えます。
増えたこと自体には気付けないので、一覧を開いて読む日を決めておくことが、いちばん効果がある対策でした。

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この記事は「AIの実務利用」の1本です。

土台から確認したい方へ

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 AIが一度に扱える範囲の話です。記憶の仕組みは、この制約の外側を補うために作られています。

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 覚えさせてよい内容の線引きは、入力の線引きと同じです。

→ ハルシネーションとは|5段階でわかる用語解説
 古い前提を覚えられたときに何が起きるかが分かります。

用語の全体像はこちらで確認できます。
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この記事を書いた人:kkazuki|AI/DX分野ブログ運営者 → 運営者情報

※記載内容は2026年10月1日時点の公表情報にもとづき、2026年10月23日に各社のリリースノートで再確認しました。提供範囲は変更されるため、判断の前に各サービスの公式情報を確認してください。

参考

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