AGI予測の最新動向2026|各社の発言とベンチマークの記録

空中に浮かぶ画面に手を伸ばす、金属の人型ロボットのCG

この記事は、2026年8月時点でAGIについての動向や専門家や関係者の発言などをを記録として整理したものです。
AGIという概念そのものから確認したい場合は、解説記事がありますのでご参照ください。
→ AGIとは

2026年のAGIにまつわる大きな話題として、2026年4月、MicrosoftとOpenAIの契約から「AGI条項」が事実上なくなりました。
両社は長らく、AGIが実現したと宣言された時点で契約関係が変わる仕組みを持っていましたが、その仕組み自体をたたんだ形です。

契約の当事者ですら、AGIを到達点として扱うのをやめた。
本記事では、そこに至る経緯と、各社の発言、ベンチマークの数字、そして研究者や専門家の見方を、日付つきで解説します。

この記事でわかること

知りたいこと要点詳しくは
誰がいつと言っているか2026年内から2047年まで、40年以上の幅がある開発元各社の発言
なぜ数字が比べられないか定義が4通りあり、どれを指すかで年が変わる定義の分裂
契約上の定義はどうなったか利益額基準→独立パネル検証→2026年4月に廃止AGI条項
ベンチマークは何を示すか運営者自身が「AGIの達成ではない」と明言ベンチマーク
研究者はどう見ているか76%が「スケーリングだけでは無理」と回答研究者調査

開発元各社の発言

開発元の立場と、代表者の発言を日付つきで整理します。
発言者ごとに前提としている定義が違う点は、次の章で扱います。

発言者時期内容
Sam Altman(OpenAI)2026年8月26日まだAGIには到達していないとしつつ、自身の定義を受け入れるなら2026年末までに到達しうると発言(TIME誌の取材)
Greg Brockman(OpenAI社長)2026年4月2日AGIまでの到達度について「基本的に70〜80%のところにいる」
Demis Hassabis(Google DeepMind)2026年5月26日今後2〜5年、次の1年は「練習期間」
Sundar Pichai(Google)2026年5月26日具体的な年は避け、3年後にAGIと呼ぶかは重要ではない、とにかく強力になるので備えが要ると発言
Shane Legg(DeepMind共同創業者)2025年12月時点2009年から一貫して「2028年までに50%」と述べており、今も変えていない
Dario Amodei(Anthropic)2026年1月26日指数関数的な進歩が続くなら、AIがほぼ全てで人間を上回るまで数年しかかからないはずだと発言
Yann LeCun(当時Meta)2025年5月大規模言語モデルの規模を拡大するだけでは人間並みには届かないと発言。その後Metaを離れた
Elon Musk(xAI)2024年5月/2023年7月2024年に「来年」と述べたが実現せず。2023年時点では2029年までと発言

なお、ここでいう大規模言語モデルの仕組みそのものは、LLM(大規模言語モデル)とは|5段階でわかる用語解説で解説しています。

予測は一方向に動いていません。
2023年から2024年にかけて前倒しになり、2025年にやや後退し、2026年に入って再び前倒しになったという点が整理した上で見えてきた点です。ただしこのような見解を書いた側にとっても、「全員が違う定義を使っているため単一の中央値では語れない」と明記しています。

定義が4通りに割れている

数字を比べられない最大の理由は、AGIという語が指すものが人によって違うことです。
2026年時点で、少なくとも4系統の定義が並存しています。

系統定義の中身提唱している側
経済価値基準経済的に価値のある大半の仕事で人間を上回る自律的なシステムOpenAI憲章
段階分類性能5段階×汎用性2軸の行列で位置づけるGoogle DeepMind「Levels of AGI」(2023年11月)
認知能力基準知覚、生成、注意、学習、記憶、推論、メタ認知など10の認知能力で測るGoogle DeepMind(2026年3月16日の新フレームワーク)
スキル獲得効率訓練データに含まれないスキルを効率的に習得できる能力ARC Prize Foundation

DeepMindは2026年3月に、「AGIを達成したかどうか」という二元論に代わる評価の枠組みを新たに提案しました。
達成/未達成で語ること自体をやめる方向に、提唱者側が動いています。

AGIの定義が4系統に分かれていることを並べた図。経済価値基準はOpenAI憲章によるもので、経済的に価値のある大半の仕事で人間を上回る自律的なシステム。段階分類はGoogle DeepMindが2023年11月に示したもので、性能5段階と汎用性2軸の行列で位置づける。認知能力基準は同社が2026年3月16日に示したもので、知覚、生成、注意、学習、記憶、推論、メタ認知など10の認知能力で測る。スキル獲得効率はARC Prize Foundationによるもので、訓練データに含まれないスキルを効率的に習得できる能力を指す。
どの定義で語っているかを確かめないと、各社の発言は比べられません。

「AGIという語をやめよう」という主張

定義の分裂を受けて、語そのものを問い直す声が出ています。

元OpenAI取締役会メンバーのHelen Toner氏は、2026年4月6日に「AGIという用語はほぼ無意味になった」と述べました。
3人が同じ話をしていると思っていても実際には全く違うものを指している、として、「完全自動化されたAI研究開発」のようなより具体的なマイルストーンへの置き換えを提案しています。

学術の側でも、2025年のICMLで「AGIをAI研究の北極星として扱うのをやめよ」という趣旨の論文が発表されました。
著者16名の連名で、AGIを目標に据えることが合意の幻想を生み、質の低い科学を助長すると主張しています。

認知科学者のGary Marcus氏は、2025年10月のロンドン王立協会での講演で、「社会としてAGIが近いという前提に1兆ドル規模の賭けをしている」と述べています。

AGIをめぐる議論は、実現時期の議論から、そもそも何を指す語なのかという議論へ移りつつあります。

MicrosoftとOpenAIのAGI条項

定義の問題が最も具体的な形で現れたのが、両社の契約です。報道によれば、契約上のAGIの扱いは3段階で変わりました。

第1段階:利益額を基準にした定義
2024年12月ごろの報道では、契約上のAGIは「OpenAIの初期投資家が得られる利益の上限、およそ1,000億ドルに到達する能力」という金額基準で定義されていたとされます。
知能の水準ではなく、稼げる金額でAGIを定義していたということです。

第2段階:独立した専門家パネルによる検証
2025年10月28日、両社は関係を再構築しました。
AGIの宣言をOpenAIの取締役会が単独で行うのではなく、独立した専門家パネルが検証する方式に変わりました。
MicrosoftのIPライセンスは2030年まで、またはAGIの検証達成まで、いずれか早いほうとされました。

第3段階:条項の廃止
2026年4月27日、契約はさらに改訂されました。
収益配分は2030年で終了、MicrosoftのIPライセンスは2032年まで、といずれも期限で固定され、AGI宣言の有無に関わらない形になりました。

哲学的なAGI到来の賭けから、通常の商業契約へ移った、と評されています。
世界で最も具体的だったAGIの定義が、実務上は不要になったというのが結論です。

ベンチマークの現在地

AGIに近づいたかを測るとされる指標のスコアを挙げます。
いずれも運営元の公表値です。

ARC-AGI

抽象的なパズルを解く能力を測る指標で、AGIの名前を冠しています。

時期出来事
2024年12月20日ARC-AGI-1でOpenAI o3が高計算量設定で87.5%を記録
2025年3月24日ARC-AGI-2を発表。発表時点で主要モデルはどれも5%を超えられなかった
2025年12月5日ARC-AGI-2で商用モデル最高はClaude Opus 4.5の37.6%。精緻化した仕組みでは54%
2026年3月25日ARC-AGI-3を発表。静的なパズルから、探索と適応を測る対話的な環境へ
ARC-AGIの経過を4つの時点で並べた図。2024年12月20日にARC-AGI-1でOpenAI o3が高計算量設定で87.5%を記録。2025年3月24日にARC-AGI-2が発表され、発表時点で主要モデルはどれも5%を超えられなかった。2025年12月5日にARC-AGI-2での商用モデル最高がClaude Opus 4.5の37.6%、精緻化した仕組みでは54%。2026年3月25日にARC-AGI-3が発表され、静的なパズルから探索と適応を測る対話的な環境へ移った。
指標が新しくなるたびに、スコアはいったん振り出しに戻っています。

注目したいのは、運営者自身の言葉です。

ARC-AGI-1で87.5%が出た2024年12月、François Chollet氏は「ARC-AGIを突破することはAGIの達成と同義ではない。実際、o3はまだAGIではないと考えている」と書いています。

2025年12月のまとめでも、共同創設者のMike Knoop氏が「では我々はAGIを手にしたのか。まだだ」「推論システムにはAGIに必要な多くの欠陥と非効率が残っている。新しいアイデアがまだ要る」と述べています。

ARC-AGI-2は、各課題を最低2名の人間が2回未満の試行で解けることを条件に選ばれており、**人間なら解ける問題で、最高のモデルが37.6%**という状態です。

その他の指標

指標最高スコアモデル出典
Humanity’s Last Exam46.44%Gemini 3.1 Pro Preview(thinking high)Scale AIのリーダーボード
FrontierMath(Tier 1-3)38%Gemini 3 ProEpoch AI
GPQA Diamond87%(±2%)Grok 4Epoch AI
3つのベンチマークのスコアを比べた棒グラフ。Humanity's Last ExamはGemini 3.1 Pro Preview(thinking high)で46.44%、FrontierMath(Tier 1-3)はGemini 3 Proで38%、GPQA DiamondはGrok 4で87%。GPQA Diamondには人間の専門家のベースライン69.7%を示す点線があり、この指標ではすでに人間を上回っている。点線はGPQA Diamondの基準線で、ほかの2指標には当てはまらない。いずれも運営元の公表値。
どの指標を見るかで、「人間に追いついたか」の答えが変わります。

GPQA Diamondの人間の専門家のベースラインは69.7%とされており、この指標では既に人間を上回っています。

なお、FrontierMathとGPQA Diamondについては、第三者の集計サイトにこれより高い数値が掲載されていました。
運営元の公式ページで裏を取れなかったため、本記事では運営元の数値のみを載せています。
ベンチマークのスコアを引用する記事を読むときは、運営元の発表か集計サイトかを確かめましょう。

研究者と予測市場

開発元の発言とは別に、調査による見方がありますのでまとめました。

研究者調査

AI Impactsの2023年調査は、AI研究者2,778名(回答率15%)から回答を得ています。
機械が人間の労働者より優れた形ですべての作業を実行できるようになる年について、50%の確率での中央値は2047年でした。
前年の調査(2060年)から13年前倒しになっています。

AAAIが2025年3月19日に公表した報告書では、AI研究者475名のうち**76%が「現行のAIの手法を拡大することでAGIを達成できる可能性は低い、または非常に低い」**と回答しました。
77%が、AGIの直接追求よりも、受け入れ可能なリスクと便益の比率を持つAIシステムの設計を優先すべきと答えています。

開発元の代表者の予測と、研究者全体の見方には大きな開きがあります。

予測市場

予測市場Metaculusの「AGIの実現時期」を問う質問では、コミュニティ予測の中央値が2033年4月、信頼区間は2029年6月から2040年12月です。

ただしMetaculusには定義の異なるAGI関連の質問が複数並んでおり、質問ごとに中央値が違います。
「Metaculusの予測は◯年」と紹介されている数字を見たら、どの質問のものかを確認してください。

ニュースの読み方

以上を踏まえると、AGI関連の記事に当てる問いは3つに絞れます。

1. 誰が言っているか
開発元の代表者か、独立した研究者か、批判的な立場の専門家か。上の表のとおり、立場によって予測は数十年ずれます。

2. どの定義か
経済価値基準なのか、認知能力基準なのか、スキル獲得効率なのか。定義が違えば、同じ「AGI」でも別の話をしています。

3. 数字の出どころはどこか
ベンチマークのスコアなら運営元の発表か。予測なら誰を対象にした調査か。

この3つを当てるだけで、AGIをめぐる記事を理解しやすくなります。
判断の枠組みそのものは、AGIについての記事で詳しく解説しています。
→ AGIとは

筆者の受け止め

「AGIが近い」という見出しを見たとき、私が最初に確認するのは発言者です。開発元の代表者なのか、独立した研究者なのか。本文の表のとおり、そこで予測は数十年ずれます。
次に見るのが定義で、記事のどこにも定義が書かれていない場合は、その記事を読むのをやめています。時間の使い方として、そのほうが合理的だと考えているからです。

毎日AIを使っている実感と、予測の数字のあいだには、正直かなりの距離があります。私がAIに任せているのは、資料の要約、原稿の構成の整理、誤字の検出といった作業です。どれも助かっていますが、任せきりにできるものは1つもありません。
出力は必ず読み返しますし、固有名詞と数値は自分で確認します。この作業を毎日やっている感覚からすると、経済的に価値のある大半の仕事で人間を上回るという状態は、まだ遠くにあるように思えます。

1年前と比べて変わったのは、予測の年号への関心が薄れたことです。以前は「2027年」「2030年」という数字を見るたびに、それを前提に何を準備すべきかを考えていました。
いまは、そもそも同じ言葉で違うものを指している議論だと分かったので、年号そのものを追わなくなりました。本文に書いた、MicrosoftとOpenAIの契約からAGI条項が消えたという事実は、この受け止めをはっきりさせるものでした。

仕事の判断にAGIの予測を織り込んでいるかというと、織り込んでいません。予測の幅が40年以上ある以上、特定の年を前提に計画を立てるのは現実的ではないからです。代わりにやっているのは、四半期に一度、いま使えるAIで何が新しくできるようになったかを自分で試すことです。予測を追うより、こちらのほうが判断の材料として確実だと感じています。

よくある質問(FAQ)

Q. 結局AGIはいつ来るのですか?
A. 予測の幅は2026年内から2047年まで開いています。開発元の代表者は数年以内と述べる一方、研究者2,778名を対象にした2023年の調査では中央値が2047年でした。予測が割れる最大の理由は、AGIの定義が人によって違うことです。

Q. なぜ数字がこれほど違うのですか?
A. 定義が少なくとも4系統あるためです。経済価値で測るのか、認知能力で測るのか、訓練データにないスキルを習得できるかで測るのかによって、同じモデルを見ても評価が変わります。

Q. ベンチマークで高得点が出たらAGIですか?
A. ARC-AGIの運営者自身が、突破することはAGIの達成と同義ではないと明言しています。2025年12月のまとめでも「まだAGIではない」「新しいアイデアがまだ要る」と述べています。

Q. MicrosoftとOpenAIのAGI条項はどうなりましたか?
A. 2026年4月27日の契約改訂で事実上なくなりました。収益配分は2030年まで、IPライセンスは2032年までと期限で固定され、AGI宣言の有無に左右されない形になっています。

Q. 研究者はAGIが来ると思っているのですか?
A. AAAIが2025年3月に公表した調査では、AI研究者475名のうち76%が「現行の手法を拡大することでAGIを達成できる可能性は低い」と答えています。開発元の代表者の発言とは開きがあります。

Q. AGIという言葉自体に問題があるのですか?
A. そう主張する人がいます。元OpenAI取締役会メンバーのHelen Toner氏は2026年4月に「ほぼ無意味になった」と述べ、より具体的なマイルストーンへの置き換えを提案しました。学術の側でも同趣旨の論文が出ています。

Q. 仕事の判断に織り込むべきですか?
A. 実現時期が数十年の幅で割れている以上、特定の年を前提に計画を立てるのは現実的ではありません。いま使えるAIで何ができるかを確かめるほうが、判断の材料としては確実です。

まとめ

AGIの実現時期をめぐる予測は、2026年内から2047年まで40年以上の幅で割れています。
割れる理由は技術の見通しの違いだけでなく、AGIという語が指すものが4系統に分かれていることにあります。

その分裂が最も具体的に表れたのが、MicrosoftとOpenAIの契約です。
利益額を基準にした定義から、独立パネルによる検証へ、そして2026年4月には条項そのものが廃止されました。

ベンチマークについては、AGIの名前を冠したARC-AGIの運営者自身が「突破してもAGIの達成ではない」と繰り返し述べています。
研究者475名の調査でも、76%が現行手法の拡大では届かないと答えました。

AGIの記事を読むときは、誰が、どの定義で、どこの数字を根拠に言っているかを確かめてください。
それだけで、受け取り方が落ち着きます。

動向は変わりますが、土台にある考え方は変わりません。
体系的に理解しておくと、次に新しい予測が出たときに自分で読み解けるようになります。

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【参考】

内容は2026年8月28日に以下の資料で確認しました。

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