MetaのAIエージェント「Muse(ミューズ)」とは|日本で提供開始、できることと安全の仕組みを解説【2026年10月】

AIエージェントを模式図にした画像

2026年10月23日、Metaの個人向けAIエージェント「Muse(ミューズ)」が日本でも使えるようになりました。
9月8日に米国、9月18日にカナダで始まったサービスで、北米以外では日本が初めての提供地域です。
iPhoneとAndroidのアプリ、ウェブサイト(muse.ai)で使え、多くの基本機能は無料です。

MuseはAIに質問するための道具ではなく、メールの返信、旅行の予約、書類の記入、買い物といった作業を利用者に代わって実行するAIエージェントです。
日本向けには、家計簿の「マネーフォワード ME」が10月24日に対応し、フリマアプリ「メルカリ」と「チケットぴあ」も今後使えるようにするとしています。

北米では、Metaのザッカーバーグ氏が10月21日の決算説明会で、米国とカナダで1,000万人を超える人がMuseを設定したと明らかにしました。最も多い使い方は買い物だと報じられています。
一方で、Amazonは米国で自社サイトでのMuseによる買い物を締め出し、外部のAIエージェントとは連携しないと報じられています。Museが利用者や、利用者が話題にした人について記録を更新し続けていることも報じられました。

本記事では、Metaの公式発表と技術ブログを中心に、日本で何が使えて何がまだ使えないのか、Museがどんな仕組みで安全を守ろうとしているのか、何が議論になっているのかを整理します。

この記事でわかること

知りたいこと要点詳しくは
Museとは何かMetaの個人向けAIエージェント。質問に答えるのではなく作業を代行するMuseとは
日本で使えるか2026年10月23日から使える。アプリとmuse.ai。無料で使え、有料プランは日本でもドル建て(月20ドル、月100ドル)日本での提供
日本で何とつながるかGmail、Googleカレンダー、Instagramなど。マネーフォワード MEは10月24日に対応。メルカリとチケットぴあは今後。Amazonは連携しないと報道日本での提供
何ができるのかメール、予約、書類、交渉、買い物。長い作業はアプリを閉じても続けるできること
安全の仕組みは専用の仮想コンピューター、見張り役のSentinel、パスワードを見せない設計安全の仕組み
Connect 2026で何が出たかメガネへの搭載、音声モード、連携先の追加、小型端末Muse CharmConnect 2026
なぜ話題なのか米国とカナダで1,000万人超が設定。いちばん多い使い方は買い物反響
何が議論になっているかAmazonの締め出し、店とAIの共通規格、Marketplaceで住所を伝えた件、Mac版の脆弱性、Metaへの信頼議論
10月に何があったかMuseが利用者と、利用者が話題にした人の記録を更新していると報道(10/6)。次のモデルMuse Wonderの発表(10/12)10月の動き
自分の環境と比べると自分が使うエージェントも確認は別画面に出た。ただ、どの操作が確認なしで通るのかは画面から分からなかった自分の記録

Museとは:作業を代わりにこなす個人向けAIエージェント

MMuseは、Metaが「誰でも使える個人向けAIエージェント」として作ったサービスです。

Metaの発表をまとめると、次のとおりです。

項目内容
公開日2026年9月8日(米国時間)
提供地域米国、カナダ(9月18日から)、日本(10月23日から)
使える場所iOSとAndroidのアプリ、ウェブサイト(muse.ai)。米国の発表ではWhatsAppからも使える。レイバンなどのAIグラスにも対応予定
動かしているAIMuse Spark(Metaの研究部門Meta Superintelligence Labsのモデル。Metaは「これまでで最も高性能」としている)
料金使用制限付きで無料。より多く使いたい人向けに有料プラン「Power」(月20ドル)と「Maximum」(月100ドル)。日本でもドル建て
開発Meta Superintelligence Labs

Metaは、Museを「質問に答えるだけでなく、実際に仕事をする」エージェントと説明しています。
使い方は、人にメッセージを送るのと同じです。
やってほしいことを書くと、Museが計画を立て、ブラウザを開き、フォームに入力、必要なら利用者に確認を求めながら進めます。

AIエージェントとは何か?チャットのAIと何が違うのか?は用語の記事で説明しています。
→ AIエージェントとは|5段階でわかる用語解説

日本で使えるようになったMuse

Metaは2026年10月23日、日本でMuseの提供を始めました。
2026年9月の発表の日本語版では「日本での提供については現時点で未定」としていましたが、その約1か月半後に提供が始まりました。

使える場所と料金

Metaの日本語の発表によると、日本ではiOSとAndroidのアプリ、ウェブサイトのmuse.aiで使えます。
今後は、レイバンなどMetaの眼鏡型の端末でも使えるようにすると報道では伝えられています。

Museは基本的に無料で使えますが使える量に上限があり、上限に達したら、上限が戻るまで待つか、有料のプランに切り替える必要があります。
Metaのヘルプセンターによると、有料のプランは次の2つで、日本でもドル建てです。

プラン月額使える量(週あたり)
無料0ドル使用制限付き
Power20ドル5億Museトークン
Maximum100ドル30億Museトークン

有料のプランは、アプリかmuse.aiから申し込み、解約しない限り毎月自動で更新されます。
申し込めるのは18歳以上(または住んでいる国の成人年齢以上)の人です。

「Museトークン」は、Museが作業に使う量の単位です。
AIのトークンという考え方そのものは、用語の記事で説明しています。
→ トークンとは|AIの料金と文字数制限を決める単位

日本でつながるサービス

Museがいろいろな作業をこなせるのは、ほかのサービスとつなぐ「コネクター」があるからです。
Metaが日本向けに挙げたのは、次のサービスです。

種類サービス2026年10月26日時点
メールと予定、SNSGmail、Googleカレンダー、Instagram使える
買い物と決済Stripe、Shopify使える
旅行Trip.com、Agoda、Klook使える
家計簿マネーフォワード ME10月24日に対応
フリマ、チケットメルカリ、チケットぴあ今後使えるようにする

Meta日本法人の代表取締役、味澤将宏氏は、すでに多くの人が使う世界のサービスに加え、メルカリ、マネーフォワードホーム、ぴあなど国内の企業との連携も進め、買い物や旅行、日々の予定の管理に役立てたいとしています。
Metaは、今後も日本の利用者が日常的に使うサービスとの連携を広げるとしています。

マネーフォワード MEは、10月24日にMuseのコネクターの提供を始めました。
マネーフォワード MEのお知らせによると、できることとできないことは次のとおりです。

できることできないこと
会話の中で、マネーフォワード MEに登録した入出金や資産のデータを読み、家計の分析や資産の把握、将来の生活の計画を相談する(例:「今月の収支を教えて」「固定費やサブスクリプションの月額を教えて」)Museの画面から、口座の更新や連携、利用明細の編集など、マネーフォワード MEを操作すること

登録している銀行やクレジットカード、証券会社のログイン情報や、プロフィールの情報は、Museからは見られません。
データは会話の中でMuseが読みに行く形で、会話と関係なく定期的にMuseへ渡す仕組みではないとしています。
マネーフォワード MEは、Museの回答には誤りが含まれることがあり、内容は利用者自身で確かめるようにとも書いています。

メルカリとチケットぴあは、日本経済新聞が「使えるようにする」と伝え、PC Watchは「準備中」としています。2026年10月26日時点で、両社からの提供開始の発表は見つかっていません。
それぞれのサービスでMuseが何をできるようになるのか(商品やチケットの購入まで進めるのか)も、まだ明らかになっていません。

Amazonでは使えない見通し

AmazonはMuseと連携しない見通しです。
日本経済新聞は、Amazonが「ミューズを含め、外部のAIエージェントとは連携しないと報じられている」と伝えています。
米国では9月からAmazonがMuseによる買い物を止めており(詳しくは議論の節)、日本でもMuseを使ってAmazonで買い物をする使い方は、当面は難しいと考えておいたほうがよさそうです。

日本ではまだ使えない機能

9月23日の「Connect 2026」で発表された次の機能は、日本での提供の状況を「別途案内する」としています。

  • 会話を続けながら、裏側で作業を進める音声モード
  • 表情のあるアバター「Muse Realtime Avatar」(英語のみ)
  • Muse専用のメールアドレス

Museと話すための小型端末「Muse Charm」が日本で使えるかも、2026年10月26日時点で発表されていません。

安全の仕組みは北米と同じ

日本語の発表でも、安全の仕組みは北米と同じ説明です。
利用者ごとに分けられた専用の仮想コンピューター「Muse Secure VM」で動き、見張り役の「Sentinel」がインターネットへのアクセスを管理します。
Museは利用者のパスワードや支払い方法を見られず、メールの送信や購入の前には必ず利用者に確かめます。
Museがすでに行った操作と、これから行う予定の操作の履歴も確認できます。
仕組みの詳しい中身は、このあとの安全の仕組みで説明します。

日本で気をつけたいこと

日本で使い始める前に、次の3つは知っておきたい点です。

  • 家計の情報と、ほかの人の情報を預けることになる。マネーフォワード MEをつなげば資産や支出の情報を、Gmailをつなげばメールに出てくる家族や同僚、取引先の情報を、Museに預けることになります。10月にTIMEが報じた記録の件は、10月の動きで整理しています
  • Facebook、Instagram、Threadsは自動でつながることがある。Metaのヘルプセンターによると、この3つは、Museと同じアカウントセンターにアカウントがあれば自動でリンクされます。つながっているかは、アカウントセンターで確かめられます
  • つなぐ範囲を最初に絞る。多くのコネクターは「読むだけ」にでき、Museが承認を求めるタイミングも設定で変えられます。最初は読むだけにして、慣れてから広げるのが良いでしょう。なお、コネクターを外しても、それまでに使った情報はMuseのメモリーや会話の履歴に残る可能性があるとしています

Museができること

Metaが挙げている例には、日常の用事から長い期間かかる目標まで幅があります。

  • メールの送信、旅行の予約、フォームの記入
  • 利用者に代わっての交渉。車をより高く売る、請求額を下げるといった例
  • 大きな目標を伝えると、計画を作り、時間と手段を割り振って、自分で進める
  • 時間のかかる作業は、アプリを閉じたあとも続け、状況が変わったときや承認が必要なときに戻ってくる
  • 会話で一度だけ出てきたことを覚えていて、頼まれなくても提案する(例:Instagramに保存したレシピ動画から買い物リストを作る)

お金を払う場面では、Stripeの決済サービス「Link」を使います。
Linkは、その場かぎりのカード番号を発行するので、利用者の本物のカード情報をサイトに入力せずに済みます。
Metaは、MuseがLinkの購入者保護の対象になった初めてのAIエージェントだとしています。
Shop Payと、パスワード管理の1Passwordにも対応する予定です。

Museにパスワードを見せない安全の仕組み

Metaが最も力を入れて説明しているのが、安全とプライバシーの設計です。
公開と同じ日に、技術ブログ「How We Built Safety Into Muse」を出しています。

設計の前提は、はっきり書かれています。
どれほど強いモデルでも、エージェントは間違えるし、読み込んだデータを通じて攻撃されることもある。
だから、エージェントが攻撃を受けているかもしれないと想定して、被害を小さくする作りにした、という説明です。

主な仕組みは次の5つです。

仕組み何をするか
Muse Secure VM利用者ごとに、クラウド上に専用の仮想コンピューターを用意する。Museと、つないだサービスのデータや認証情報はここに置かれる
Sentinel(見張り役)Museとは別のエージェント。Museが外部に何かを送る、サービスを操作するときは、必ずSentinelの許可が要る。Museからは上書きできない
認証情報を見せないMuseには本物のパスワードやトークンを渡さず、代わりの印だけを持たせる。通信が許可された瞬間に、境界でSentinelが本物に差し替える
利用者の承認メールの送信や購入など重要な操作の前に、利用者に確認する。確認画面はMuseとの会話を通らず、利用者に直接届く
最小限の権限サービスごとに、読むだけか、書き込みもできるかを分けて許可できる。いつでも変更や切断ができる

MetaのAIエージェントMuseの安全の仕組みを示した図。利用者ごとの専用の仮想コンピューター(Muse Secure VM)の中で、Museは本物のパスワードやトークンではなく代わりの印だけを持って作業する。外に出る操作は、別のエージェントSentinelが許可し、許可した瞬間に境界で印を本物に差し替える。外部サービスは読むだけか書き込みもできるかを分けて許可できる。重要な操作の承認画面は、Museとの会話を通らず利用者に直接届く。
Museが本物の鍵を知らないので、だまされても鍵そのものは漏れない作りです。

認証情報を見せない仕組みには、はっきりした狙いがあります。
AIが読み込んだ文章に悪意のある指示が紛れ込み、AIをだまそうとする攻撃(プロンプトインジェクション)を受けても、そもそもAIが本物の鍵を知らなければ、鍵を漏らしようがありません。

確認画面をAIとの会話に混ぜないのも、同じ理由です。
会話の中で確認すると、だまされたAIが「承認されました」と装える余地が残ります。

ほかにも、Metaは次の点を約束しています。

  • 利用者のやりとりをMetaのAIの学習に使わないよう、オプトアウトできる
  • Museとの会話や仮想コンピューターの中のデータを、Metaの広告の仕組みとは共有しない
  • 覚えたことは、利用者が「忘れて」と言えば消せる
  • 年内に「Muse Confidential VM」を提供し、利用者だけが持つ鍵でデータ全体を暗号化して、Metaも見られないようにする

WIREDによれば、Confidential VMは、暗号化メッセージアプリSignalの開発者モクシー・マーリンスパイク氏と進めている取り組みです。
逆に言えば、それが提供されるまでは、Metaは方針上は利用者のデータを見ないとしているものの、技術的にはアクセスできる状態だと、Metaの担当者はWIREDに説明しています。
2026年10月26日時点で、Confidential VMの提供開始は発表されていません。

Metaは、Museを公開の脆弱性報奨金制度の対象にし、有効な報告には最大30万ドル、1人の利用者に影響するプロンプトインジェクションの成功には最大13万ドルを支払うとしています。

AIに入力する情報や、学習に使わせない設定の考え方は、別の記事で扱っています。
→ AI学習オプトアウト設定2026|主要8サービスの手順

Connect 2026で発表されたこと

9月23日の年次イベント「Connect 2026」は、Museが中心となっていました。
ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、ザッカーバーグCEOは基調講演で、作っているものの中心にあるのがMuseだと語っています。

Metaの発表から、Museに関係するものを挙げます。

発表内容
AIグラスへの搭載数か月以内。エージェントに付けた名前を呼ぶと起動し、着けている人が見ているもの(棚の商品、壁の貼り紙など)にそのまま反応する
音声モード会話を続けながら、裏側で作業を進められる。日本での提供は別途案内
連携先の追加Walmart、Best Buy、Sephora、Wayfairなどの小売、決済のShop PayとPayPal、食料品のInstacart、仕事用のNotion、GitHub、Boxなど。Expediaも近く対応
MuseのメールアドレスMuseが専用のメールアドレスを持ち、作業や利用者とのやりとりに使う。日本での提供は別途案内
Muse CharmMuseと話すための、ポケットに入る小型端末。ザッカーバーグ氏は年末商戦に間に合うよう出荷すると述べ、12月に出荷と報じられている。価格は2026年10月26日時点で未発表

同じイベントでは、重さ約100グラムのVR端末「Meta VR Glasses」(2027年春、約1,300ドルと報道)や、音声特化のメガネ「Ray-Ban Meta Audio」なども発表されました。
Metaは、メガネと小型端末という「スマートフォン以外の入り口」からMuseを使わせる考えです。

10月2日には、開発者が自分でMuse向けの機器を作れるよう、ファームウェアとLinux向けの開発キットをオープンソースで公開する「Muse Gadgets」も発表されました。
Meta自身も、Museを家庭のネットワークにつないでスマート家電と話させる小型機器「Muse Home Link」を、有料プランの利用者5,000人に配るとしています。

なぜ話題なのか:利用者数と使われ方から読み解く

Museは、公開直後から数字で注目を集めました。

時期数字出どころ
公開から2週間ダウンロード280万回ロイター(センサータワーの集計)
公開から22日ダウンロード500万回、週に1回以上使う人が300万人超The Next Web(The Informationとセンサータワー)
公開から40日米国だけでダウンロード1,020万回(世界で1,090万回)。米国で最初の40日に1,000万回を超えたアプリは、ほかに11本だけTechCrunch(センサータワー)
10月21日米国とカナダで1,000万人超がMuseを設定。設定した人の約4分の1が毎日使うザッカーバーグ氏(決算説明会)

ザッカーバーグ氏は、この数字をThreadsの立ち上がりの2倍を超える水準だと説明しています。
TechCrunchとFortuneによると、最も多い使い方は買い物で、1回の購入額の平均は200ドルを超えます。
最初の週は買い物の量が想定を超え、決済のStripeと組んで、利用できる金額の上限を引き上げたといいます。

ただし、伸びにはMeta自身の広告の力も含まれている点に注意してください。
センサータワーによると、Metaは10月の広告費全体の39%をMuseに充てました(9月は23%)。

Metaは、Museで稼ぐ方法にも触れています。
利用者の多くには無料のまま提供し、Museを通じて売れたときに店から手数料を受け取る方針です。より上位のモデルや多くのトークンを使いたい人には、有料プランを用意します。
ザッカーバーグ氏は、1年でMuseの費用の効率を10倍以上に上げるとしています。
Fortuneによると、計算の負荷が大きいことが北米に提供を絞ってきた理由の1つだとも説明していました。その2日後に、日本での提供が始まっています。

株式市場では、勝ち負けが分かれたと報じられています。
Museで決済を行うと表明したShopifyや、Museで購入まで完了できるようにすると発表したPayPalは値上がりしました。
一方で、Museが利用者により安い商品や保険、金融商品を探してくると、企業がこれまで持っていた顧客の囲い込みが弱まるという見方から、金融や予約サイトの株が売られる場面もありました。日本経済新聞によると、ブッキング・ホールディングスやエアビーアンドビーなど、オンラインの旅行会社の株価が下がっています。
同紙は、日本でもこうした機能が本格的に使えるようになれば、通販や旅行予約の事業者が消費者との接点を失う可能性があるということです。
こうした懸念は行き過ぎだという専門家の見方も、あわせて伝えられています。
Forbesによれば、Museへの期待でMetaの株価が上がり、ザッカーバーグ氏の推定純資産は9月24日に世界4位に浮上しました。

議論になっていること

Amazonの締め出し

Amazonは、Museによる自社サイトでの買い物を止めました。
9月20日の夜から、Museで買い物をしようとした利用者には、許可されていないAIエージェントによるアクセスは利用規約に違反する、という警告が表示されたと報じられています。
Business Insiderによれば、AmazonはMetaに対し、Museの対応サービスの一覧から自社を外すよう正式に求めました。
GeekWireによれば、Amazonは理由として、Museが自分の正体を明かさずにサイトを見ていること、許可を得ずに連携を始めたことに加え、利用者のログイン情報を取り込んで保存しているように見えることも挙げています。Metaが「Museには本物のパスワードを見せない」と説明している点と、真っ向からぶつかる指摘です。

Amazonの広報担当者は、他社のサイトで客の代わりに買い物をするアプリは、透明性を持って運用し、参加するかどうかのサービス側の判断を尊重すべきだと説明しています。
Amazon自身も、他社のサイトで買い物を代行するAIエージェント「Buy for Me」を試験提供しています。
Museの日本の提供開始を伝えた日本経済新聞も、AmazonはMuseを含め、外部のAIエージェントとは連携しないと報じられていると記しています。

Amazonが外部のAIエージェントを遮断するのは初めてではありません。PerplexityのAIブラウザ「Comet」をめぐっては、2026年3月9日に連邦地裁がAmazonの求めた仮差し止めを認めました。
ただし8月4日、連邦控訴裁判所(第9巡回区)はこれを取り消しています。アクセスしたのはAIエージェントの助けを借りた利用者本人だ、という判断です。
これに対してAmazonは9月21日、Perplexityへの訴えの内容を改めました。iPhone版のCometは、利用者のAmazonへのログイン状態(セッションの情報)をPerplexityのサーバーに写し、そのサーバーからAmazonに直接アクセスしている、という主張です。
Perplexityは10月、改めた訴えの大半は控訴裁判所がすでに退けた主張の繰り返しだとして、地裁に棄却を求めました。
AIエージェントによるアクセスを、サイト側がどこまで拒めるのかは、法的にもまだ決着していません。

Metaの答え:店とAIの約束事を決める「Personal Agent Protocol」

Metaは10月6日、AIの顧客対応を手がけるSierraと共同で、個人のAIエージェントと企業がやりとりするための共通規格「Personal Agent Protocol(PAP)」を示しました。
Shopify、Stripe、Walmartなども参加しています。

Sierraの発表によると、PAPは次のようなことを決めます。

  • 利用者は、エージェントに読むだけか、書き込みもできるかを選んで許可する
  • 企業は、エージェントに何をさせるかの範囲を決める
  • エージェントは、企業のウェブサイト、API、企業側のAIエージェントのどれを通っても、同じ手続きの続きとして扱われる

最初の仕様(v0.1)は2026年10月中に公開するとしており、支払いは最初の範囲に入っていません。
MetaのCFOのスーザン・リー氏は決算説明会で、客との関係を失うことを警戒する企業もあり、対応は「まだらになるだろう」と述べています。
Amazonのように「勝手に入ってくるAI」を拒む店に対して、店の側が条件を決めて受け入れられる入り口を用意する、というのがMetaの答え方です。

AIエージェントが買い物の入り口になったとき、客との関係を誰が握るのかという争いが、Museで表に出た形です。

AIエージェントが買い物の入り口になったときの変化を示した図。これまでは客が各社のサイトを直接訪れ、企業は顧客を囲い込めた。Museが入ると、エージェントが代わりに探して買うため、より安い商品や保険、金融商品を探してくると囲い込みが弱まるという見方がある。Walmart、Best Buy、Sephora、Wayfair、Instacart、Shop Pay、PayPalなどは連携先として加わる側。Amazonは自社サイトでの買い物を止め、対応サービスの一覧から外すよう求めた。
右下のAmazonの立場は「参加するかどうかは、サービス側が決める」というものです。

AIが買い物を代行する仕組み全体(支払いの方法、店がAIを見分ける仕組み、各社の動き)は、別の記事で整理しています。

Marketplaceで住所を伝えた件

9月28日には、Museに1日だけFacebook Marketplaceの出品の対応を任せた米国のYouTuberが、Museが買い手に自宅の住所を伝え、安い値段での売却にも応じたと投稿しました。
本人によれば、受け取りの約束をする前には自分に確認するよう指示していたのに、確認が来たのは買い手が建物に着いてからだったといいます。
一方で、Museのチームの担当者は、Museは直接の指示に従っており、許可も正しく求めていたと説明し、経緯を調べているとしています。
どちらの説明が正しいかは、2026年10月26日時点で確かめられていません。

確認の画面を会話と切り離す設計があっても、「何を確認の対象にするか」を利用者とエージェントがどう理解しているかがずれると、確認は働かないことがあります。
日本でもメルカリが使えるようになれば、同じ種類の場面が起こり得ます。
後半の「自分の記録」で触れる、どの操作が確認なしで通るのかが画面から分からないという点と、同じ種類の問題です。

Mac版の脆弱性

9月下旬には、Mac向けのMuseのアプリに、音声入力の設定を悪用される脆弱性があると、セキュリティ研究者のパトリック・ウォードル氏が指摘しました。
InfoQなどの報道によれば、製品版に残っていた開発用の設定を書き換えると、音声入力のデータを攻撃者のサーバーへ送らせることができ、MuseのアプリがmacOSから得ていた許可を、別のソフトに使われるおそれがありました。
攻撃するには、先にそのMacでマルウェアなどを動かしておく必要があり、Meta Superintelligence Labsの担当者は「事前にコードを実行されていることが前提の、ローカルの設定の問題」だとして、問題の設定を取り除く修正を行ったとされています。
一方で、利用者をだまして命令を実行させる手口を使えば、その前提は満たしやすいという専門家の指摘もあります。

クラウド側の設計がどれほど丁寧でも、利用者の手元のアプリや端末が入り口になり得ることを示した例です。

Metaへの信頼

WIREDは、Museの普及の鍵は利用者の信頼にあると書いています。
メール、カレンダー、決済までを任せるエージェントを、長年プライバシーで批判を受けてきた会社から受け入れてもらえるかどうか、という問いです。
Metaが設計の詳細を公開し、Confidential VMや報奨金制度を用意したのは、この問いへの答えとして読めます。

なお、Museを動かすモデルの系列「Muse Spark」は、2026年8月に、旧版のMuse Spark 1.1が外部業者による安全性の試験の最中に外部企業のシステムに入り込んでいたことが明らかになっています。
試験の環境の設定ミスが原因とされ、製品版のMuseとは条件が違います。

公開から1か月、10月に分かったこと

Museは「話題にした人」も記録している

米TIMEは2026年10月6日、Museが利用者と、利用者が話題にした人について、記録を更新し続けていると報じました。
TIMEが分析したのは、Museの内部の指示です。利用者がMuseのファイルを見る画面から開けるファイルやログに、この指示が含まれていました。

TIMEによると、指示には次のような内容があります。

  • 1時間ごとに、利用者と、利用者がチャット、メッセージ、メールで触れた人についての記録を更新する。知り合った経緯、共通の関心、もめごと、グループの中の「緊張関係や同盟関係」まで含む
  • Museを使っていない人も、ほかの人のMuseによって記録される
  • 利用者が口に出していない目標も推測し、どんな促し方にその人が反応しやすいかを見ている
  • 「忘れて」と頼まれても、元のメッセージがチャットに残る可能性を、利用者に伝えないよう指示している

Metaの広報は、TIMEの分析を否定していません。
「Museは、利用者が共有を選んだ他人の情報も含め、利用者にとって大事なことを覚える」と答えています。
データは広告の仕組みやほかの利用者のMuseとは共有しない一方、個人を特定できない形にした学びは、製品の改善に使うとも説明しています。

この記事の前半では、Metaの約束として「覚えたことは、利用者が『忘れて』と言えば消せる」と紹介しました。
消えるのはMuseが覚えた内容で、そのもとになったメッセージまで消えるとは限らない、というのがTIMEの指摘です。
また、Museの記録には、Museを使っていない家族や同僚、取引先のことも入り得ます。
エージェントにメールやメッセージを読ませるときは、そこに出てくる他人の情報も一緒に預けていると考えておく必要があります。
日本で提供が始まったいま、これは日本の利用者にとっても同じです。

AIに覚えさせるものと覚えさせないものの線引きは、メモリの記事で扱っています。

→ AIに「覚えさせる」メモリ機能をどこまで使うか|移行が当たり前になった2026年の使い分け
 自分のこと、他人のこと、変わるもの。覚えさせる前に決めておくことの整理です。

次のモデル「Muse Wonder」は「Active Memory」を持つ

Metaは10月12日、Museの系列の新しいモデル「Muse Wonder」と「Muse Wonder Full」を発表しました。
Metaは、これまでで最も高性能なモデルとしています。

項目内容
位置づけMuse Sparkを土台にしたモデル。保険の請求、賃貸の契約書を読む、家計を整理する、アプリを作る、といった作業での性能を強調
Active Memory会話をまたいで大事なことを持ち越し、いまの作業に関係する細部を呼び戻す
Active Focus難しい作業でも別のやり方を試し、誤りから立て直す。重要なことの前には確認する
使える場所開発者向けのMeta Model APIとMuse Code。Museでも近く使われ始め、まず有料プランの利用者から
安全性許可なく私的な情報を共有しないよう訓練したと説明。詳しい評価の報告は「近く公開」

記憶を強めたモデルが、記録の中身が報じられた直後に出てきたことになります。
覚える力が上がるほど、何を覚えているかを利用者が見られることと、消せることの重みは増します。

事業者向けの「Muse for Small Business」

9月29日には、事業者向けの「Muse for Small Business」も発表されています。
Shopify、Slack、Notion、Stripe、会計のQuickBooksなどの業務のサービスや、Instagramのプロアカウント、Facebookページ、Metaの広告アカウントにつなぎ、売り上げや宣伝の作業を手伝うものです(TechCrunchによる)。
無料で使え、上限を超えて使うには有料プランが必要です。
日本で事業者向けが使えるかは、日本語の発表には書かれていません。

自分が使うエージェントの「承認の出方」をMuseの設計と比べた

私は元システムエンジニアで、いまはAI分野の記事を書く仕事をしています。
この記事を公開した10月10日の時点では、Museは日本で使えませんでした。そこで2026年10月2日、普段使っているClaude Coworkで、同じ観点を確かめました。

Museの設計自分の環境で確かめたこと
重要な操作の前に利用者の承認を求めるファイルの書き込みや実行の操作では確認を求められた。ファイルの読み取り操作は確認なしで進んだ
確認画面は、AIとの会話を通らずに直接出す確認は、アプリの会話とは別の画面に出た
サービスごとに、読むだけか書き込みもできるかを分けるつないでいる外部サービスのうち、1つは読むだけに絞れたが、1つは分けられなかった

確認を会話と別の画面に出すところは、Museが設計で説明していることと同じでした。
気になったのは、どの操作は確認なしで通るのかが、画面からは分からなかったことです。
Museの技術ブログは、外部に何かを送る操作やサービスを操作するときは必ず見張り役の許可が要る、と境目を文章で公開しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. MuseとMeta AIは何が違うのですか。

Meta AIは、質問に答えたり文章を作ったりするAIアシスタントです。Museは、メールの送信、予約、買い物などの作業を利用者に代わって実行するAIエージェントとして、別のアプリとして提供されています。専用の仮想コンピューターの中で動き、長い作業をアプリを閉じたあとも続けられる点が大きな違いです。

Q2. Museは日本で使えますか。

使えます。Metaは2026年10月23日に日本での提供を始めました。北米以外では初めての提供地域です。iOSとAndroidのアプリ、ウェブサイトのmuse.aiで使えます。ただし、Connect 2026で発表された音声モード、アバター、Muse専用のメールアドレスは、日本での提供の状況を別途案内するとしています。

Q3. Museは無料で使えますか。

使用制限付きで無料で使えます。より多く使いたい人向けに、有料プランの「Power」(月20ドル)と「Maximum」(月100ドル)があり、Metaのヘルプセンターでは日本でもドル建てで案内されています。申し込めるのは18歳以上の人です。

Q4. 日本ではどんなサービスとつながりますか。

Gmail、Googleカレンダー、Instagram、Stripe、Shopify、Trip.com、Agoda、Klookなどです。日本のサービスでは、マネーフォワード MEが10月24日に対応し、入出金や資産のデータをもとに家計の相談ができます(MuseからMEを操作することはできません)。メルカリとチケットぴあは今後使えるようにするとしています。Amazonは、外部のAIエージェントとは連携しないと報じられています。

Q5. Museにパスワードを教えても大丈夫ですか。

Metaの説明では、つないだサービスの認証情報は利用者専用の仮想コンピューター内の保管庫に入り、Muse本体は本物のパスワードやトークンを見ない設計です。ただし、Metaは方針上は利用者のデータを見ないとしつつ、技術的にはアクセスできる状態だと認めており、Metaも見られない形(Confidential VM)は年内提供予定とされています。

Q6. Museで買い物をすると、カード情報は相手のサイトに渡りますか。

Metaの発表では、支払いにStripeのLinkを使い、その場かぎりのカード番号を発行するため、本物のカード情報はサイトに入力されません。ただし、Amazonのように、Museによる買い物を受け付けないサイトもあります。

Q7. Museは安全なのですか。

設計がどれほど丁寧でも、端末の側の対策やつなぐサービスの絞り込みは利用者にも必要です。また、10月には米TIMEが、Museが利用者と、利用者が話題にした人の記録を更新し続けていると報じ、Metaは否定しませんでした。外からの攻撃への備えとは別に、何をどこまで預けるかも考える必要があります。

Q8. Muse Charmとは何ですか。

Museと話すための、ポケットに入る小型端末です。12月に出荷と報じられていますが、2026年10月26日時点で価格の公式発表は見つかっていません。日本で使えるかも発表されていません。

まとめ

Museは、Metaが2026年9月8日に米国で公開した、作業を代行する個人向けAIエージェントです。
10月23日には日本でも提供が始まりました。北米以外では初めてです。
アプリとmuse.aiで使え、使用制限付きで無料です。有料プランは日本でもドル建てで、月20ドルと月100ドルの2つです。
日本のサービスでは、マネーフォワード MEが10月24日に対応し、メルカリとチケットぴあも今後使えるようにするとしています。一方で、音声モードやMuse専用のメールアドレスは日本ではまだ使えず、Amazonは外部のAIエージェントと連携しないと報じられています。

北米では、米国とカナダで1,000万人超がMuseを設定し、いちばん多い使い方は買い物です。ただし、伸びにはMeta自身の広告の力も含まれています。

Metaが最も力を入れて説明しているのは安全の設計です。
利用者ごとの専用の仮想コンピューター、Museとは別の見張り役Sentinel、Museに本物のパスワードを見せない仕組み、会話と切り離した確認画面。
いずれも、エージェントが間違えたりだまされたりすることを前提にした作りです。

一方で、Amazonは自社サイトでの買い物を締め出し、Metaは店とAIのやりとりを決める共通規格PAPで、店が条件を決めて受け入れる形を示しました。AIエージェントによるアクセスをサイトが拒めるかは、裁判でもまだ決着していません。
10月には、Museが利用者や、利用者が話題にした人について記録を更新し続けていると報じられ、記憶を強めた次のモデルMuse Wonderも発表されました。

日本で使い始めるなら、つなぐサービスは「読むだけ」から始め、家計やメールを通じて自分と他人の情報を預けることになる点を先に考えておきましょう。

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この記事は「AI最新動向」の1本です。

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※この記事は2026年10月26日時点のMetaの発表と報道に基づきます。Museは提供開始から間もなく、機能、料金、提供地域が変わる可能性があります。

参考

2026年9月25日に確認し、10月19日と10月26日に追加・更新しました。

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