
エージェンティックコマースとは、AIエージェントが利用者に代わって、商品を探し、比べ、注文と支払いまで済ませる買い物のことです。
これまでのネット通販は、検索も比較もカートに入れるのも支払いも、ほとんど人が行なっていました。エージェンティックコマースはその大半を、AIが引き受ける形です。
2025年9月29日にOpenAIがChatGPTの中で買い物を完結させる「Instant Checkout」を、2026年1月11日にGoogleがAIと店をつなぐ共通規格「UCP」を発表しました。
ただしOpenAIは2026年3月、支払いは店の側の手続きに任せる形に方針を改めています。
2026年9月8日には、Metaが個人向けのAIエージェント「Muse(ミューズ)」を米国で公開しました。いちばん多い使い方は買い物だと報じられ、10月23日には日本でも使えるようになりました。
一方でAmazonは、外部のAIエージェントによる自社サイトでの買い物を止めており、「AIが客になったとき、店はそれを受け入れるのか」が争点になっています。
本記事では、エージェンティックコマースで何が変わるのか、どんな仕組みで安全に支払うのか、何が議論になっているのかを整理し解説します。
2026年10月26日時点で、ここで紹介するサービスのうち日本で使えるのはMuseで、ほかの多くは米国が中心です。日本で本格的に広がる前に、仕組みを知っておくための記事です。
この記事でわかること
先に結論をまとめます。知りたい項目から読んでください。
| 知りたいこと | 結論 | 詳しくは |
|---|---|---|
| エージェンティックコマースとは | AIエージェントが探す、比べる、注文する、支払うを代行する買い物 | 意味 |
| これまでのネット通販と何が違うか | 人が店のサイトを回る形から、AIが店を回る形へ | 違い |
| どの会社が何を出したか | OpenAI、Google、Meta、Visaなどが仕組みを発表。多くは米国から | 各社の動き |
| 安全に支払えるのか | 使い捨てのカード番号、購入前の確認、AIの身元の証明と、店との約束事で守る | 仕組み |
| 何が議論になっているか | 店がAIを拒めるか。AmazonはMuseとPerplexityを締め出した | 議論 |
| 日本ではどうなるか | Museが10月23日に日本で始まった。日本のサービスで使えるのはまだ家計簿だけで、Amazonは連携しない見通し | 日本 |
| 利用者は何に気をつけるか | どこまで任せるかを先に決める。確認の画面を読み飛ばさない | 注意点 |
エージェンティックコマースの意味
「エージェンティック(agentic)」は「自分で判断して動く」、「コマース(commerce)」は「商取引」という意味です。
合わせて自分で判断して動くAI(AIエージェント)が行う商取引を指します。
AIエージェントは質問に答えるだけのAIと違い、目標を与えると手順を自分で組み立て、ほかのサービスとつながりながら作業を進めます。
→ AIエージェントとは|5段階でわかる用語解説
買い物にあてはめると、たとえば次のような頼み方になります。
「来週の旅行用に、機内に持ち込めるサイズで2万円以内のスーツケースを探して。評価の高いものを3つ比べて、いちばん軽いものを注文して」
AIは条件に合う商品を複数の店から探し、比べ、選んだ商品をカートに入れ、支払いの直前で利用者に確認を求めます。
人がするのは、条件を伝えることと、最後に「買う」と決めることだけになります。
エージェンティックコマースには、大きく2つの形があります。
| 形 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 店の中のAI | 1つの店のサイトやアプリの中で、AIが接客して購入まで案内する | Googleの検索で、店のAIの販売員と話して買う |
| 利用者のAI | 利用者が使うAIが、複数の店を横断して買い物を代行する | ChatGPT、Gemini、Museが店を回って買う |
議論になりやすいのは2つ目の利用者のAIです。店側から見ると、客の代わりに見知らぬAIがやってくることを意味するからです。
これまでのネット通販と何が変わるか
| 買い物の段階 | これまで | エージェンティックコマース |
|---|---|---|
| 探す | 人が検索し店のサイトを開く | AIが条件に合う商品を集める |
| 比べる | 人がタブを並べて見比べる | AIが表にまとめて候補を絞る |
| 注文する | 人がカートに入れ住所を入力する | AIがカートに入れ登録済みの情報で埋める |
| 支払う | 人がカード番号を入れる | AIが本物の番号を見せない仕組みで支払う |
| 決める | 人 | 人(購入の直前に確認する) |
最後の決める判断が人であるという点は変わりません。少なくともいまの主要なサービスは、お金を払う前に必ず人に確認を求める設計になっています。
店側にとっても大きくな変化となります。
これまでは、人に見つけてもらうためにサイトの見た目や広告を工夫してきましたが、これからはAIに正しく読み取ってもらうために、商品の情報(大きさ、在庫、価格、配送の条件)をきちんと整えることが重要になるからです。

各社の動き:2025年秋から一気に進んだ
主要な発表は、2025年9月から1年ほどのあいだに集中しています。
以下に2025年9月からの主要な発表をまとめました。
| 時期 | 会社 | 発表の内容 |
|---|---|---|
| 2025年9月29日 | OpenAI | ChatGPTの中で買い物を完結させる「Instant Checkout」を米国で開始。Stripeと共同で、AIと店が取引するための規格「Agentic Commerce Protocol(ACP)」をオープンソースで公開。まず米国のEtsyの出品者、続いて100万を超えるShopifyの店に広げる予定 |
| 2026年1月11日 | AIと店をつなぐ共通規格「Universal Commerce Protocol(UCP)」を発表。Shopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartと共同で開発。Googleの検索のAIモードとGeminiから、米国の店の商品を購入できるようにした | |
| 2026年3月24日 | OpenAI | Instant Checkoutの方針を転換。店が自分の決済の手続きを使えるようにし、OpenAIは商品を見つける段階に力を入れる。ACPは、商品の発見の段階で店と利用者をつなぐ役割に広げる |
| 2026年5月20日 | UCPを使った購入を、カナダとオーストラリアに「今後数か月で」、その後に英国へ広げると発表。ホテルの予約、料理の配達にも広げる | |
| 2026年7月2日 | Visa | AIエージェントが欧州の実際の店で、利用者の承認のもとに購入を完了する取引を始めたと発表。30以上の欧州の発行銀行が参加 |
| 2026年9月8日 | Meta | 個人向けAIエージェント「Muse」を米国で公開(9月18日からカナダも)。Stripeの決済サービス「Link」で支払う |
| 2026年10月6日 | Meta、Sierra | 個人のAIエージェントと企業がやりとりするための共通規格「Personal Agent Protocol(PAP)」を発表。Shopify、Stripe、Walmartなどが参加 |
| 2026年10月15日 | 複数の店の商品を1つにまとめる「Universal Cart」を米国で開始。カートからの支払いはUCPが支える | |
| 2026年10月23日 | Meta | Museを日本で提供開始。北米以外では初めて。翌24日にマネーフォワード MEが対応。メルカリ、チケットぴあも今後使えるようにする |
ChatGPTのInstant Checkoutと、その後の方針転換
2025年9月の発表によると、利用者は商品の「購入」を押し、注文、配送、支払いの内容を確認して買う形でした。
手数料は店が払い、利用者は払いません。OpenAIは、この手数料が価格にも、商品の表示の順番にも影響しないとしていました。
発表時点では、1回に1つの商品の購入に対応し、米国のChatGPTの無料版、Plus、Proの利用者が対象でした。
ところが2026年3月24日、OpenAIはInstant Checkoutの最初のバージョンは、目指す柔軟さを提供できなかったとして、方針を改めました。
店は自分の決済の手続きを使えるようになり、たとえばShopifyの店では、ChatGPTの中で開くブラウザから店のサイトで購入を済ませられます。
OpenAI自身は、商品を見つける段階に力を入れるとしています。ACPも、商品の情報や値引きを店からChatGPTに渡し、発見の段階で店と利用者をつなぐ仕組みとして広げる方針です。
「AIの中で支払いまで完結させる」形は、半年ほどで見直されたことになります。
支払いの手続きを誰が持つかは、次節で解説する「店はAIを受け入れるのか」という争点とも重なっています。
GoogleのUCP
UCPは、商品の発見、購入、購入後のサポートまでをカバーする、AIと店のあいだの共通の言葉です。
各社がばらばらの方法でつながると、店は対応するAIの数だけ作業が増えます。共通の規格にすれば、1回の対応で多くのAIから買ってもらえるという考え方です。
Googleの検索で買う場合も、売り手はあくまで店であり、支払いにはGoogle Payが使われます(今後PayPalにも対応予定)。
AIモードの中に広告主が限定の値引きを表示できる「Direct Offers」の試験も開始されました。画面では「Sponsored deal(広告の特典)」と表示されます。AIが選んだ商品と、広告の商品が同じ画面に並ぶことになります。
UCPでの購入は米国から始まり、2026年5月の発表で、カナダ、オーストラリア、英国へ広げる方針が示されました。日本は、この発表では対象地域には含まれていません。
MetaのMuse
Museは、買い物だけでなく、メールや予約、書類の記入までこなす個人向けAIエージェントです。
Metaの発表によると、支払いにはStripeの「Link」を使い、その場かぎりのカード番号を発行して、本物のカード情報を隠せるとして、メールの送信や購入のような重要な操作の前には、必ず利用者に確認するとしています。
Metaのザッカーバーグ氏は2026年10月21日の決算説明会で、米国とカナダで1,000万人を超える人がMuseを試したと明らかにしました。
TechCrunchとFortuneによると、いちばん多い使い方は買い物で、1回の購入額の平均は200ドルを超えます。
Metaは、利用者の多くには無料で提供し、Museを通じて売れたときに店から手数料を受け取る方針です。
10月23日には、日本でも使えるようになりました。日本で何とつながるかは、日本の節で解説します。
Museの機能、安全の仕組み、日本での料金については、別の記事で詳しく解説しています。
→ MetaのAIエージェント「Muse(ミューズ)」とは|日本で提供開始、できることと安全の仕組みを解説【2026年10月】
安全に買うための3つの仕組み
AIに買い物を任せるとき、問題になるのは「誰の意思か」「お金をどう渡すか」「店はAIを信用できるか」の3つです。
| 問題 | 起こりうること | いま使われている対策 |
|---|---|---|
| 誰の意思か | AIが条件を取り違えて、頼んでいないものを買う | 購入の直前に、人が内容を確認して承認する |
| お金をどう渡すか | AIや店のサイトからカード番号が漏れる | 使い捨てのカード番号や、番号の代わりの記号(トークン)で支払う |
| 店はAIを信用できるか | 悪意のあるプログラムが、客のふりをして買い占めや不正をする | AIの身元を証明する仕組み、店が参加と条件を選べる規格 |

人の確認を残す
Meta、Googleはいずれも、支払いの前に人が確認する設計を明示しています。
OpenAIも、Instant Checkoutでは注文の内容を確かめてから買う形で、いまは店のサイトの手続きの中で人が購入を確定します。
日本の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(総務省、経済産業省、2026年3月31日)も、AIエージェントの留意点として「人間の判断を介在させる仕組みの構築や最小権限設定」を挙げています。
最小権限とは、AIに必要以上の権限を渡さないことです。買い物で言えば、「この金額まで」「この店だけ」と範囲を決めることにあたります。
本物のカード番号を渡さない
Museが使うStripeのLinkは、1回だけ使えるカード番号を発行します。
仮にその番号が外部に漏れても、もう一度は使えないので被害が広がりにくくなります。
Metaは、Museが利用者のパスワードや支払い方法を見られない設計にしているということです。
店がAIを見分け、条件を決める
Visaは「Trusted Agent Protocol」という仕組みで、店が信頼できるAIエージェントと、そうでないプログラムを見分けられるようにしています。
Visaが7月に欧州で始めた取引でも、店がAIエージェントを受け入れるための仕組みとして使われています。
UCPやACPのような共通の規格も、店が「どのAIと、どの条件で取引するか」を選択できるようにしたものです。
2026年10月6日には、MetaとSierraが「Personal Agent Protocol(PAP)」を示しました。Sierraの発表によると、PAPでは利用者がエージェントに「読むだけ」か「書き込みもできる」かを選んで許可し、企業はエージェントにさせることの範囲を決めます。
最初の仕様は2026年10月中に公開するとしており、支払いは最初の範囲に入っていません。
議論になっていること:店はAIを拒めるのか
エージェンティックコマースで最も大きな争点は、店が外部のAIエージェントを締め出せるかどうかです。
AmazonとPerplexity
AmazonはPerplexityのAIブラウザ「Comet」が自社サイトで買い物をすることを問題にし、裁判で争ってきました。
2026年3月9日には、連邦地裁がAmazonの求めた仮差し止めを認めましたが、8月4日には連邦控訴裁判所(第9巡回区)はこれを取り消しています。
判決は、Amazonのサイトにアクセスしているのは、AIの助けを借りた利用者本人だという考え方を示しました。
ただし、米国のコンピューター不正利用防止法の「アクセス」の解釈に限ったもので、AIエージェント全般について新しいルールを作ったものではないとしています。契約や不法行為など、ほかの論点は残されたままです。
9月10日には、Amazonが求めた再審理も退けられました。報道によると、Amazonは9月21日に訴状を修正し、カリフォルニア州の法律や、契約関係の妨害についての主張を加えています。
Perplexityは10月、修正された訴状の大半は控訴裁判所がすでに退けた主張の繰り返しだとして、地裁に棄却を求めました。
AmazonとMuse
2026年9月20日から、AmazonがMuseによる自社サイトでの買い物を止めたと報じられました。
Amazonの広報担当者は、他社のサイトで客の代わりに買い物をするアプリは、透明性を持って運用し、参加するかどうかの店の判断を尊重すべきだと説明しています。
Amazon自身も、他社のサイトで買い物を代行する「Buy for Me」を試験提供しています。
日本経済新聞は、AmazonがMuseを含め、外部のAIエージェントとは連携しないと報じられているとも伝えています。
何が争われているのか
表面上はサイトへのアクセスの問題ですが、根底にあるのは客との関係を誰が持つかです。
- AIが客の代わりに買えば、店は客の顔(閲覧の履歴、好み)を直接見られなくなる
- 店のサイトで見せていた「ついで買い」の提案や広告も、AIに飛ばされるかもしれない
- 一方で、AIの入り口を持つ会社(OpenAI、Google、Meta)は、客の買い物の入り口を握ることになる
株式市場もこの点に反応しています。日本経済新聞によると、米国ではMuseが登場してから、ブッキング・ホールディングスやエアビーアンドビーなど、オンラインの旅行会社の株価が下がりました。
Meta自身もこの点を認めています。CFOのスーザン・リー氏は10月21日の決算説明会で、客との関係を失うことを警戒する企業もあり、PAPへの対応は「まだらになるだろう」と述べました。
そのうえでMetaは、Museを通じて売れたときに店から手数料を受け取る方針を示しています。
AIの入り口を握る会社と、店を持つ会社の綱引きが、エージェンティックコマースの裏側で起きています。

日本ではどうなるか
2026年10月23日、MetaのMuseが日本でも使えるようになりました。北米以外では初めての提供地域です。
ここで紹介したほかの仕組みは、2026年10月26日時点では米国が中心です。GoogleのAIモードとGeminiでの購入は米国から始まり、広げる先として発表されたのもカナダ、オーストラリア、英国でした。10月15日に始まったGoogleのUniversal Cartも米国だけです。
日本のMuseは何とつながるか
Metaの日本語の発表によると、日本のMuseは、Gmail、Googleカレンダー、Instagram、Stripe、Shopify、旅行のTrip.com、Agoda、Klookなどとつながります。
Museは購入の前に必ず利用者に確認し、パスワードや支払い方法は見られない設計だと、日本語の発表でも説明しています。
日本のサービスとのつながりは、2026年10月26日時点で次のとおりです。
| サービス | 状況 | 買い物との関係 |
|---|---|---|
| マネーフォワード ME(家計簿) | 10月24日に対応 | 入出金や資産のデータを読んで、家計の相談に答える。MuseからMEの操作はできない |
| メルカリ(フリマ) | 今後使えるようにする(公式の提供開始の発表はまだ) | 何ができるようになるかは未発表 |
| チケットぴあ(チケット) | 今後使えるようにする(公式の提供開始の発表はまだ) | 何ができるようになるかは未発表 |
| Amazon | 外部のAIエージェントとは連携しないと報道 | 米国ではMuseによる買い物を止めている |
いま日本のサービスで使えるのは、買い物ではなく「家計を見る」ほうです。
メルカリやチケットぴあで、探すだけでなく購入まで進めるのか、日本のカード会社やコード決済に対応するのかは、発表に書かれていません。
日本のネット通販の規模
日本でも、ネット通販はすでに大きな市場です。
経済産業省が2026年10月21日に公表した調査によると、2025年の個人向けの電子商取引(BtoC-EC)の市場規模は27.6兆円で、前の年より5.5%増えました。物販のうちネットで買われた割合(EC化率)は9.80%です。
Museの日本の連携先と重なる分野も伸びています。
同じ調査で、チケットの販売は前の年より15.13%増え、個人と個人が売り買いする電子商取引(CtoC-EC)は2兆6,870億円と推計されています。
日本経済新聞は、日本でもAIエージェントによる買い物が本格的に使えるようになれば、利用者が通販サイトや旅行予約のサービスを直接使う機会が減り、これらの事業者が消費者との接点を失う可能性があると書いています。
市場が大きいぶん、AIの入り口を握る会社と店の綱引きは、日本でも起こり得ます。
日本で広がるかどうかの鍵
日本で広がるかどうかは、次の点にかかっています。
| 鍵になること | 理由 |
|---|---|
| 日本の店がつながるか | 日本で使われている大きな通販サイトやモールが、共通の規格やAIエージェントとの連携に対応するか |
| 日本の決済に対応するか | 国内のカード会社、コード決済、後払いに、AIが使える形で対応するか |
| 日本語で正しく条件を読み取れるか | サイズ、配送の条件、定期購入かどうかなど、細かい条件を取り違えないか |
| ルールが整うか | AIが誤って買ったときに、誰がどう責任を持つか |
日本ではまだ、AIエージェントによる買い物に特化したルールは見あたりません。
現時点では、AI事業者ガイドラインのような一般的な考え方と、これまでの通販のルールの組み合わせで考えることになります。
利用者が気をつけたいこと
Museのように日本で使えるサービスも出てきたので、気をつけたい点を整理しておきます。
- 任せる範囲を先に決める。金額の上限、買ってよい店、定期購入は不可、などを最初に伝える
- 確認の画面を読み飛ばさない。数量、サイズ、配送先、定期購入になっていないか。人の確認は、最後の安全装置です
- 「お試し」に注意する。画面の作りで判断を誘導するダークパターンは、AIが読み取っても見落とすことがあります
- 広告と、AIの選んだ結果を見分ける。「Sponsored(広告)」の表示がある候補は、AIが条件で選んだものとは限りません
- ログイン情報の扱いを確かめる。AIにパスワードを渡す設計か、渡さずに済む設計か。つなぐサービスは「読むだけ」から始める
3つ目のダークパターンについては、別の記事で詳しく解説しています。
→ ダークパターンとは|「お試し」が定期購入になる画面の作りと、2026年9月に出た規制の中間取りまとめ
4つ目の広告について、ChatGPTの広告の仕組みは別の記事で整理しています。
→ ChatGPTの広告は何を見て選ばれているのか|無料版に出る広告の仕組みと消し方、スポンサーエージェント【2026年10月】
AIに渡す情報の線引きは、こちらで整理しています。
→ 生成AIに入力してよい情報とだめな情報|設定だけでは防げないこと【2026年9月】
自分のAIに「探して比べる」まで任せてみた
私は元システムエンジニアで、いまはAI分野の記事を書く仕事をしています。
2026年10月15日、替えのイヤホンを「5,000円以内、ノイズキャンセリング付き」という条件で、Claudeに3つ探してもらいました。
3つの候補はすぐに挙がり、自分で探すより早く絞り込めました。
ところが、5,000円以内と伝えたのに、挙がったのはいずれも「セールの価格なら5,000円を切る」商品でした。
店のサイトで確かめると、3つのうち2つはセール中で5,000円以下、1つはセールをしておらず5,000円を上回っていました。
「探して比べる」だけでも確かめる作業が残るので、支払いまで任せるなら確認の画面を読む手間は減らないと感じました。
よくある質問(FAQ)
Q. エージェンティックコマースとは、簡単に言うと何ですか。
A. AIエージェントが、利用者の代わりに商品を探し、比べ、注文と支払いまで済ませる買い物のことです。人は条件を伝え、最後に買うかどうかを決めます。
Q. ネット通販のおすすめ機能とは何が違いますか。
A. おすすめ機能は、店が自分の商品を提案するものです。エージェンティックコマースでは、利用者のAIが複数の店を横断して探し、注文の手続きまで進めます。選ぶ主体が店から利用者のAIに移る点が違います。
Q. AIが勝手に買い物をすることはありませんか。
A. いまの主要なサービスは、支払いの前に必ず利用者の確認を求める設計です。ただし、任せる範囲を広げすぎると、確認の回数が増えて読み飛ばしやすくなります。金額の上限や買ってよい店を先に決めておくのが安全です。
Q. カード情報をAIに渡しても大丈夫ですか。
A. サービスの設計によります。MetaのMuseはStripeの仕組みで1回だけ使えるカード番号を発行し、本物の番号を隠すとしています。使う前に、本物のカード番号やパスワードをAIに見せる設計かどうかを確認してください。
Q. 日本で使えますか。
A. MetaのMuseは、2026年10月23日から日本でも使えます。日本のサービスでは、10月24日にマネーフォワード MEが対応しましたが、家計の相談に答えるもので、買い物ではありません。メルカリとチケットぴあは今後使えるようにするとされ、Amazonは外部のAIエージェントと連携しないと報じられています。GoogleのAIモードでの購入は米国から始まり、広げる先として発表されたのはカナダ、オーストラリア、英国です。ChatGPTのInstant Checkoutは2026年3月に方針が変わり、いまは店の側の手続きで支払う形です。
Q. お店の側は何をすればよいですか。
A. まずは商品の情報(大きさ、在庫、価格、配送の条件)を正確に整えることです。AIは人と違い、画像の雰囲気ではなく情報そのものを読みます。共通の規格(UCP、ACP、PAPなど)への対応は、利用しているネットショップの仕組みの対応状況を確認してください。
Q. Amazonはなぜ外部のAIを締め出しているのですか。
A. Amazonは、他社のサイトで客の代わりに買い物をするアプリは、透明性を持って運用し、店の判断を尊重すべきだと説明しています。背景には、客との関係を誰が持つかという争いがあります。米国の控訴裁判所は2026年8月、Perplexityをめぐる裁判で、アクセスしているのは利用者本人だという判断を示しましたが、Amazonは訴えを改めて争いを続けています。
まとめ
エージェンティックコマースは、AIエージェントが探す、比べる、注文する、支払うを代行する買い物です。
2025年9月のChatGPTのInstant Checkout、2026年1月のGoogleのUCP、9月のMetaのMuseと、1年ほどで大手の仕組みが出そろいました。
ただし、OpenAIは半年でInstant Checkoutの方針を改め、支払いは店に任せる形に切り替えています。AIが支払いまで済ませる形は、まだ試行錯誤の途中です。
安全に買うための仕組みは3つあります。購入の前に人が確認すること、本物のカード番号を渡さないこと、店がAIの身元を見分けて条件を決めることです。
一方で、Amazonが外部のAIを締め出したように、AIが客になったとき店がそれを受け入れるかは、まだ決着していません。MetaがPAPで示したのは、店が条件を決めて受け入れる形です。
日本では、2026年10月23日にMuseが使えるようになりました。ただ、日本のサービスでいま使えるのは家計簿のマネーフォワード MEで、メルカリやチケットぴあはこれから、Amazonは連携しない見通しです。ネット通販の市場は27.6兆円あり、AIが日本の店で買い物をする形は、これから広がるかどうかが決まっていきます。
使い始めるときは、任せる範囲を先に決め、確認の画面を読むという2つを覚えておいてください。
次に読む
→ MetaのAIエージェント「Muse(ミューズ)」とは|日本で提供開始、できることと安全の仕組みを解説【2026年10月】
日本でも使えるようになった、買い物を代行するAIエージェントの詳しい解説です。
→ AIエージェントとは|5段階でわかる用語解説
買い物を代行するAIエージェントの、そもそもの仕組みです。
→ ダークパターンとは|「お試し」が定期購入になる画面の作りと、2026年9月に出た規制の中間取りまとめ
AIに買い物を任せたときにも見落としやすい、画面の作りの問題です。
→ ダイナミックプライシングとは?W杯チケット高騰の仕組みと対策
AIが値段を決める側の話です。買う側のAIと、売る側のAIの両方が出そろいつつあります。
用語の全体像はこちらで確認できます。
→ 今さら聞けないAI用語30選|初心者でもニュースが読めるようになる意味と読み方
参考
内容は2026年10月8日に、以下の資料で確認しました(10月26日に確認し直しました)。
- 総務省、経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(令和8年3月31日・PDF)
- 経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」(2026年10月21日)
- OpenAI「Buy it in ChatGPT: Instant Checkout and the Agentic Commerce Protocol」(2025年9月29日・英語)
- OpenAI「Powering Product Discovery in ChatGPT」(2026年3月24日・英語)
- Google「New tech and tools for retailers to succeed in an agentic shopping era」(2026年1月11日・英語)
- Google「How we’re helping retailers thrive with new Universal Commerce Protocol features and AI tools on Google」(2026年5月20日・英語。カナダ、オーストラリア、英国への拡大)
- Google「Google’s new Universal Cart launches today in the U.S.」(2026年10月15日・英語)
- Visa「Visa and banks across Europe reach the next phase of agentic commerce」(2026年7月2日・英語)
- Meta「Introducing Muse: The World’s First Personal AI Agent Built for Everyone」(2026年9月8日・英語)
- Meta「Meta、パーソナルAIエージェント「Muse」を日本で提供開始」(2026年10月23日)
- Sierra「Introducing Personal Agent Protocol」(2026年10月6日・英語)
- TechCrunch「Meta says Muse has over 10M users, with shopping a top activity」(2026年10月21日・英語)
- Fortune「Mark Zuckerberg said demand for Meta’s Muse was so high, he had to get Stripe to raise credit limits」(2026年10月22日・英語。PAPとCFOの発言)
- マネーフォワード ME「[Muse]で利用できるコネクターの提供開始のお知らせ」(2026年10月24日)
- 日本経済新聞「メタのAIエージェント「Muse」、日本で開始 メルカリなどと連携」(2026年10月23日)
- CNET Japan「MetaのAI秘書アプリ「Muse」日本上陸 米国で話題沸騰 スケジュール管理やメール送信も代行」(2026年10月23日)
- 9to5Google「Google launches checkout in Gemini and AI Mode, Universal Commerce Protocol」(2026年1月11日・英語)
- Wilson Sonsini「Ninth Circuit Addresses CFAA and Agentic AI Tools in Groundbreaking Decision」(2026年8月・英語)
- GeekWire「Amazon blocks Meta’s Muse AI assistant in new standoff over agentic shopping」(2026年9月・英語)
- The Next Web「Amazon blocks Meta’s Muse and accuses Perplexity of misleading a court」(2026年9月21日・英語。再審理の棄却と修正訴状)
- MLex「Perplexity AI moves to dismiss Amazon’s amended US claims over AI agents」(2026年10月14日・英語)
- ラック「AIが新しい販売チャネルになる~EC担当者が知っておきたい『エージェンティックコマース』」(2026年8月4日)
- 本記事のAIによる商品の比較は、筆者が自分で実施した結果です(実施日は本文に記載)
※制度、サービスの提供地域や内容は、公表時点の情報です。改訂されるため、記述の時点とあわせて確認してください。
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