著作権とAI|5段階でわかる用語解説

「著作権」と書かれた3つのブロックと、周りに並ぶ色鉛筆

AIと著作権との関わりの話題はよく取り上げられますが、話が分かりにくく、「どの範囲はOKなのか」「NGとなる事例は何か」という点が見えづらくなっています。それは、まったく別の2つの論点が同時に語られているからです。

ポイントは、「学習に使ってよいのか」と「作られたものは誰のものか」というこの2点を理解することです。理解することで、AIと著作権についての話題は大半が整理できます。

本記事では、その整理を5つのレベルに分けて並べました。

なお、この記事は法律の解説ではなく、論点を整理するための一般的な説明です。
実際の判断は事案ごとに異なるため、業務で扱う場合は弁護士などの専門家にご相談ください。

どこから読むか

本記事は、同じ用語を5つのレベルに分けて解説しています。
当てはまるものを選んで、そこから読み始めてください。

→ この言葉を今日はじめて見た … Level 1から読む(3分)
→ 言葉は知っているが、人には説明できない … Level 2から読む(5分)
→ 説明はできるが、仕組みまでは怪しい … Level 3から読む(8分)
→ 仕事で使うかどうかを判断したい … Level 4から読む(9分)
→ 実装する、または技術記事を原典で読む … Level 5から読む(9分)

迷ったらLevel 1から読んでください。
知っている内容なら、数十秒で読み終えられます。

30秒で腕試し

理解度から自分のレベルを判断したい場合は、次の3問に答えてください。
答えられなくなったところが、あなたのスタート地点です。

Q1. AIと著作権の話が、2つの別々の論点に分かれることを説明できますか
→ 詰まったら Level 1から

Q2. 生成物の侵害を判断する2つの要素を挙げられますか
→ 詰まったら Level 3から

Q3. 権利が必要な制作物で、何をすべきか説明できますか
→ 詰まったら Level 4から
→ 3問とも答えられるなら Level 5から

各レベルの終わりにも理解度チェックがあります。
答えられたら次のレベルへ、分からなければ前のレベルに戻ってください。

学習データという言葉があやふやな場合は、先にこちらを読んでください。
→ AIの「学習」とは|5段階でわかる用語解説


Level 1 子供でもなんとなくわかる

ここはLevel 1です(全5レベル)
前提:なし。ここから読み始められます
想定読者:この言葉を今日はじめて見た人
このレベルのゴール:2つの別々の問題があると説明できる

作った人には権利がある

絵を描いたり、お話を書いたりすると、それを作った人に権利が生まれます。
これを著作権といいます。

勝手にコピーされたり、自分が描いたことにされたりしないための決まりです。

AIをめぐる問題は2つある

AIと著作権の話は、ややこしく聞こえます。でも、2つに分けると分かりやすくなります。

1つ目は、AIが勉強するときの話です。
AIは、たくさんの絵や文章を見て覚えます。その絵や文章にも、描いた人の権利があります。勝手に見せてよいのか、という問題です。

2つ目は、AIが作ったものの話です。
AIが描いた絵は、誰のものなのか。誰かの絵にそっくりだったら、どうなるのか。という問題です。

この2つは、まったく別の問題です。ニュースを読むときは、どちらの話かを見分けると混乱しません。

気をつけること

AIで絵や文章を作るとき、次に気をつけてください。

  • 「〇〇さんの絵みたいに描いて」と、実在する人の名前を出して真似させない
  • できあがったものが、知っている絵や文章にそっくりだったら、使わない
  • 学校の宿題や作品として出すときは、先生に確認する

つまずきポイント

「AIが作ったんだから、自分のものじゃない?」
使ったサービスの決まりによります。自由に使ってよいと書かれていることが多いのですが、条件が付いていることもあります。使う前に、決まりを読む必要があります。

理解度チェック

Q1. AIと著作権の問題は、どう分けられますか? AIが勉強するときの話と、AIが作ったものの話の2つです。
Q2. AIで絵を作るとき、してはいけないことは? 実在する人の名前を出して真似させることや、できたものが知っている作品にそっくりなのに使うことです。
Q3. AIが作ったものは、自由に使えますか? 使ったサービスの決まりによります。条件が付いていることもあるため、読む必要があります。

ここまで読めば言えるようになること

  • 著作権が何かを説明できる
  • 2つの論点に分けられる
  • 気をつけることを3つ挙げられる

言えたら、Level 2へ進む。


Level 2 少し理解できる

ここはLevel 2です(全5レベル)
前提:Level 1の内容(学習段階と生成段階という2つの論点)
想定読者:言葉は知っているが、人には説明できない人
このレベルのゴール:2つの論点の中身を説明でき、自分の作品での注意点が分かる

学習段階の論点

AIの学習には、大量の文章や画像が使われます。その多くはインターネット上にあるもので、著作権のあるものが含まれます。

日本の著作権法には、情報解析のために著作物を利用できる規定があります。著作権法第30条の4と呼ばれる条文で、2018年の改正で整備されました。

ただし、無条件ではありません。条文には「権利者の利益を不当に害する場合は除く」という趣旨の但し書きがあります。どのような場合がこれに当たるかについては、文化庁が2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」という資料で整理しています。

AIと著作権の論点を学習段階と生成段階に分けた図。学習段階では、日本の著作権法に情報解析のために著作物を利用できる規定(第30条の4)があるが、権利者の利益を不当に害する場合は除くという但し書きがある。生成段階の問いは2つで、既存の作品を侵害していないか(人が描いた場合と同じ基準で判断される)と、AIが作ったものに著作権はあるか(自動生成だけでは認められにくく、人の創作的な関与の程度に応じて認められうる)。
ニュースを読むときは、学習の話か、生成物の話かを見分ける。混ぜると話がややこしくなる。

生成段階の論点

AIが作ったものについては、2つの問いがあります。

既存の作品を侵害していないかという問い。
AIが生成したものが、既存の作品と似ている場合、著作権侵害になる可能性があります。
これは、人が描いた場合と同じ基準で判断されます。

AIが作ったものに著作権はあるかという問い。
AIが自動的に生成しただけのものには、著作権が認められにくいと考えられています。
一方、人が創作的に関与した場合は、その関与の程度に応じて認められうるとされています。

自分の作品を作るときの注意

  • 実在する作家名やキャラクター名を指示に含めない
  • できあがったものを、画像検索などで既存の作品と照らす
  • 発表する場合、AIを使った旨の表示が求められていないか確認する
  • 使ったサービスの利用規約を読む

1つ目が特に重要な点です。特定の作家名を指示に含めると、その作風に寄った出力が生成され、類似の危険が上がります。

「AIで作った」と書くべきか

法律上の義務は、現時点では一律ではありません。ただし、投稿先のサービスや、コンテストの規約で表示を求めていることがあります。

規約で求められている場合、表示しないことが規約違反になります。発表する場所ごとに確認してください。

つまずきポイント

「学習に使うのが合法なら、生成物も自由?」
別の話です。学習段階が適法であることと、生成物が既存の作品を侵害しないことは、独立した論点です。学習が適法でも、生成物が特定の作品に似ていれば、その点は別に判断されます。

理解度チェック

Q1. 学習段階に関する日本の条文は何ですか? 著作権法第30条の4です。情報解析のための利用について定めていますが、無条件ではありません。
Q2. 生成段階の2つの問いは何ですか? 既存の作品を侵害していないかという問いと、AIが作ったものに著作権があるかという問いです。
Q3. 指示に実在する作家名を含めない理由は? その作風に寄った出力が生成され、既存作品と類似する危険が上がるためです。

ここまで読めば言えるようになること

  • 学習段階の論点を説明できる
  • 生成段階の2つの問いを説明できる
  • 自分の作品での注意点を実践できる

言えたら、Level 3へ進む。


Level 3 もう少し詳しく

ここはLevel 3です(全5レベル)
前提:Level 2までの内容(第30条の4、類似性の問題、作品づくりでの注意)
想定読者:人に説明はできるが、仕組みまでは怪しい人
このレベルのゴール:2つの論点それぞれの判断枠組みを説明できる

学習段階の枠組み

日本の著作権法第30条の4は、「著作物に表現された思想または感情を自ら享受し、または他人に享受させることを目的としない場合には、必要と認められる限度で利用できる」としています。
情報解析はこの類型に含まれ、AIの学習も原則としてこの規定の対象と整理されています。

ただし、条文には、著作権者の利益を不当に害することとなる場合はこの限りでない、という趣旨の但し書きがあります。

文化庁が2024年3月に公表した「AIと著作権に関する考え方について」では、この但し書きの適用が問題となりうる場合の考え方が示されています。また、2024年7月には、実務向けに「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」も公表されています。

論点として挙げられているものには、次のようなものがあります。

  • 特定の作家の作品のみを集中的に学習させ、その作風の生成を目的とする場合
  • 情報解析用に販売されているデータベースの著作物を、許諾なく学習に用いる場合
  • 技術的な措置によって利用を制限している著作物を、それを回避して取得する場合

これらは、享受を目的としない利用という前提が崩れるか、権利者の市場と競合するかという観点から議論されています。

生成段階の枠組み

生成物が既存の著作物の権利を侵害するかは、人が創作した場合と同じ枠組みで判断されます。
判断の要素は2つです。

類似性は、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得できるかどうかです。
アイデアや作風そのものは著作権の保護対象ではなく、具体的な表現が対象になります。

依拠性は、既存の著作物に依拠して作られたかどうかです。
AIの場合、学習データに当該著作物が含まれていたか、利用者がその著作物を認識して指示したか、といった事情が考慮されうると議論されています。

この2つがそろって初めて、侵害が問題になります。
似ていても依拠していなければ、また依拠していても表現として似ていなければ、侵害にはあたりません。

生成物の著作物性

AIが生成したものに著作権が認められるかは、人の創作的寄与の程度によります。

指示を与えただけの場合、その指示が創作的な表現とみなされない限り、生成物に著作権は認められにくいと考えられています。
一方、生成と選択、修正を繰り返し、人の創作的な関与が認められる場合には、その関与の程度に応じて認められうるとされています。

この点は、生成物を自社の資産として扱えるかに直結します。
権利が発生しない場合、他者が同じものを使うことを止められません。

国による違い

この分野は、国によって扱いが異なります。

学習段階について明示的な権利制限を置く国、機械可読な形での利用拒否の表明を認める国、判例の蓄積によって判断される国など、枠組みが分かれています。
複数の国で提供するサービスでは、それぞれの法域での確認が必要になります。

つまずきポイント

「作風を真似るのは侵害?」
作風やアイデアそのものは、著作権の保護対象ではありません。そのため、作風が似ているだけでは侵害にはあたらないのが原則です。
一方、特定の作品の具体的な表現を感得できる場合は別です。また、著作権とは別に、不正競争防止法やパブリシティ権など、他の法的な観点が問題になる場合があります。
声については、「声もパブリシティ権で守られる」とした初の判決が出ています(→ AIで声優の声をまねるのは違法か)。

理解度チェック

Q1. 著作権法第30条の4の但し書きは、何を定めていますか? 著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この規定の対象外とする趣旨です。
Q2. 生成物の侵害を判断する2つの要素は何ですか? 類似性(表現上の本質的な特徴を直接感得できるか)と、依拠性(既存の著作物に依拠して作られたか)です。
Q3. AIの生成物に著作権が認められるのはどんな場合ですか? 人の創作的な寄与が認められる場合です。その関与の程度に応じて判断されます。
Q4. 作風が似ているだけでは侵害にならないのはなぜですか? 作風やアイデアそのものは著作権の保護対象ではなく、具体的な表現が対象になるためです。

ここまで読めば言えるようになること

  • 学習段階の条文と但し書きを説明できる
  • 類似性と依拠性の2要素を説明できる
  • 生成物の著作物性の判断軸を説明できる
  • 作風とアイデアの扱いを説明できる

仕事で判断する立場なら、Level 4へ進む。


Level 4 ビジネスで使う

ここはLevel 4です(全5レベル)
前提:Level 3までの内容(但し書き、類似性と依拠性、生成物の著作物性)
想定読者:仕事で使うかどうかを判断したい人
このレベルのゴール:社内規程と確認工程を、リスクの大きさに応じて設計できる

用途をリスクで仕分ける

すべての利用に同じ厳しさの確認をすると、業務が回りません。
用途を、外部に出るかどうかと、権利が必要かどうかで仕分けます。

社内でのみ使う下書きは、確認は軽くて済みます。
要約、たたき台、社内資料の草稿。
外部に出ないため、侵害の危険は限定されます。

外部に出す制作物は、確認が必要です。
広告、ウェブサイトの画像、配布資料、製品に含まれる素材。
既存作品との類似の確認と、記録の保存が要ります。

権利を主張したい制作物は、さらに設計が要ります。
自社のロゴ、キャラクター、商品デザイン。
AI生成物に著作権が発生しない可能性があるため、人の創作的関与を確保し、その過程を記録します。

規程に書くこと

指示に含めてはいけないものを具体的に列挙します。
実在する作家名、既存キャラクター名、他社のブランド名、特定の作品名。
「〇〇風」という指示も含めます。

確認の工程を定めます。
外部に出す画像については、画像検索での照合を必須にする、といった形です。

記録の対象を定めます。
使用したサービスとモデル、指示文、生成日時、選択と修正の過程。
権利を主張する必要が生じたとき、これらが根拠になります。

表示の方針を定めます。
生成AIを使用した旨を表示するか、どの範囲で表示するかを決めます。

利用規約の確認

サービスごとに、生成物の扱いは異なります。
確認する点は次の通りです。

  • 生成物の権利が利用者に帰属するか
  • 商用利用が認められるか(無料プランと有料プランで異なることがあります)
  • 出力の再配布や再販売に制限がないか
  • 侵害が生じた場合の補償の有無と条件

補償を提供する事業者もありますが、条件が付いていることが一般的です。
「補償があるから確認は不要」とはなりません。

委託先の管理

制作を外部に委託する場合、次を契約に含めます。

  • 生成AIの使用の可否と、使用する場合の申告義務
  • 使用した場合の記録の提出
  • 第三者の権利を侵害しないことの保証
  • 侵害が判明した場合の責任分担

委託先が生成AIを使っているかどうかは、明示的に確認しないと分かりません。
納品物に対する権利の帰属を前提にしている契約では、生成物に権利が発生しない場合に前提が崩れます。

自社データを学習に使う場合

自社の文書や画像を学習に使う場合、その中に他社の著作物が含まれていないかを確認します。
社内資料には、外部から取得した図表や引用が含まれていることが少なくありません。
→ ファインチューニングとは|5段階でわかる用語解説

つまずきポイント

「補償があるサービスを使えば安心では?」
補償には条件が付いていることが一般的です。
指定された設定を使っていること、侵害を意図した指示をしていないこと、といった条件が典型です。
条件を満たさない使い方をしていた場合、補償の対象外になります。
条件を規程に落とし込み、それを守る運用を作る必要があります。

理解度チェック

Q1. 用途を仕分ける2つの軸は何ですか? 外部に出るかどうかと、権利を主張する必要があるかどうかです。
Q2. 権利を主張したい制作物で必要になることは? 人の創作的関与を確保し、その過程を記録することです。
Q3. 委託契約に含めるべき項目を4つ挙げてください。 生成AI使用の可否と申告義務、記録の提出、第三者の権利を侵害しないことの保証、侵害時の責任分担です。
Q4. 補償が提供されていても確認が必要なのはなぜですか? 補償には条件が付いていることが一般的で、条件を満たさない使い方は対象外になるためです。

補償には条件が付いていることが一般的で、条件を満たさない使い方は対象外になるためです。

ここまで読めば言えるようになること

  • 用途をリスクで仕分けられる
  • 規程に書くべき4項目を挙げられる
  • 利用規約の確認点を挙げられる
  • 委託先の管理項目を設計できる

実装に踏み込むなら、Level 5へ進む。


Level 5 専門的な話

ここはLevel 5です(全5レベル)
前提:Level 4までの内容
想定読者:実装する人、技術記事を原典で読みたい人
このレベルのゴール:論点の所在を特定し、専門家と具体的に議論できる

学習段階の論点の所在

第30条の4の適用に関して、実務上の論点は但し書きの解釈に集中します。

文化庁の考え方では、権利者の利益を不当に害する場合の例として、情報解析用に整備されたデータベースの著作物を許諾なく利用する場合が挙げられています。
また、特定の作家の作品のみを学習させ、その作風の創作物を生成させることを目的とする場合についても、享受目的が併存するとして議論の対象になっています。

なお、享受目的が併存する場合には第30条の4の適用がないとされる一方、別の権利制限規定の適用可能性は別に検討されることになります。

追加学習(ファインチューニング)についても、学習の目的と、生成される出力の性質によって評価が分かれます。
特定の作品の表現を出力させることを目的とした学習は、享受目的が併存すると評価される可能性があります。

依拠性をめぐる論点

生成AIによる出力の依拠性は、従来の枠組みでは直接扱われてこなかった論点です。

議論されている考え方として、学習データに当該著作物が含まれている場合には依拠性が認められうるとする方向があります。
一方、利用者が当該著作物を認識していない場合の扱いについては、見解が分かれています。

実務的には、次の場合に依拠性が問題になりやすくなります。

  • 利用者が特定の作品名や作家名を指示に含めた場合
  • 既存の著作物を入力として与えた場合
  • 特定の作品を学習させたモデルを使用した場合

このため、指示文と入力の記録を残すことが、事後の説明において意味を持ちます。

生成物の著作物性の実務

生成物に著作権が発生しない可能性は、次の場面で実務上の問題になります。

  • 制作物の独占的な利用を前提とした事業設計
  • 第三者への権利の譲渡やライセンス
  • 委託契約における成果物の権利帰属条項

対処としては、人の創作的寄与を確保し、その過程を記録することになります。
指示の反復、生成物の選択、生成後の修正といった過程が、寄与の根拠として議論されています。

ただし、どの程度の関与で著作物性が認められるかについて、確立した基準は示されていません。
重要な制作物については、生成物をそのまま使わず、人による加工を経る運用が現実的です。

権利者側の対応

権利者が自らの著作物を学習に使わせないための対応も、実務上の論点です。

技術的な措置としては、クローラの制御による取得の抑止、利用条件の明示、機械可読な形での意思表示があります。
これらの法的な効果については、日本では確立した枠組みがなく、事業者の自主的な尊重に依存する部分が残ります。

一方、技術的な措置を回避して取得する行為については、但し書きの適用が議論される場面になります。

域外の枠組み

複数の法域で提供するサービスでは、それぞれの枠組みの確認が要ります。

学習段階について、機械可読な形での利用拒否の表明を認め、それを尊重することを求める枠組みを持つ法域があります。
また、学習に使用した著作物に関する情報の公開を求める議論もあります。

EUのAI法では、汎用AIモデルの提供者に対する義務が定められており、著作権に関する方針の策定や、学習に用いたコンテンツの概要の公開が含まれます。
高リスクに関する義務は2026年8月に開始予定でしたが、「高リスク規定はデジタルオムニバスにより2027年12月2日へ延期」となり、域外の事業者もEU域内に提供する場合は対象となりうるため、確認が必要です。

記録の設計

事後の説明可能性を確保するため、次を記録の対象とします。

  • 使用したサービス、モデル、版
  • 指示文の全文
  • 入力として与えた資料
  • 生成された候補と、選択の過程
  • 生成後の修正の内容
  • 確認の実施者と日時

権利に関する主張が必要になる場面、あるいは侵害の指摘を受けた場面のいずれでも、これらが基礎資料になります。

理解度チェック

Q1. 第30条の4の実務上の論点はどこに集中しますか? 権利者の利益を不当に害する場合を定めた但し書きの解釈です。
Q2. 依拠性が問題になりやすい場面を3つ挙げてください。 特定の作品名や作家名を指示に含めた場合、既存の著作物を入力として与えた場合、特定の作品を学習させたモデルを使用した場合です。
Q3. 生成物の著作物性が実務上の問題になる場面は? 制作物の独占的利用を前提とした事業設計、第三者への権利譲渡やライセンス、委託契約の権利帰属条項です。
Q4. 記録として残すべき項目を挙げてください。 使用したサービスとモデルと版、指示文の全文、入力資料、生成候補と選択の過程、修正内容、確認者と日時です。

ここまで読めば言えるようになること

  • 但し書きをめぐる論点を特定できる
  • 依拠性の議論の所在を説明できる
  • 著作物性が問題になる場面を挙げられる
  • 記録の設計ができる

まとめ

AIと著作権の議論は、学習段階と生成段階という2つの論点に分かれます。

Level 1では、勉強するときの話と、作ったものの話。
Level 2では、第30条の4と、類似性の問題。
Level 3では、それぞれの判断枠組み。
Level 4では、用途をリスクで仕分けて規程を作る対象。
Level 5では、但し書きと依拠性をめぐる論点。

ニュースを読むとき、どちらの話かを見分けるだけで混乱が減ります。
そして、実務で最も効果があるのは、指示文に実在する作家名や作品名を含めないという一点です。

次に読む記事

→ AIで声優の声をまねるのは違法か|「声もパブリシティ権で守られる」初の判決と、法務省の解釈指針【2026年10月】
→ オプトアウトとは|ChatGPTなどAIに学習させない設定と、オフでも残ること
→ AI倫理・AIガバナンスとは|AIとどう付き合うかのルール作り
→ 今さら聞けないAI用語30選


よくある質問(FAQ)

Q. AIと著作権の論点は何ですか?
A. 学習段階と生成段階の2つに分かれます。学習に著作物を使ってよいかという論点と、生成物が既存の作品を侵害しないか、生成物に著作権があるかという論点です。

Q. AIの学習に著作物を使うのは違法ですか?
A. 日本の著作権法第30条の4は、情報解析のための利用について定めており、AIの学習も原則としてこの対象と整理されています。ただし権利者の利益を不当に害する場合を除く但し書きがあり、その解釈が論点になっています。

Q. AIが作った絵に著作権はありますか?
A. 人の創作的な寄与の程度によります。指示を与えただけの場合は認められにくく、生成と選択、修正を繰り返して人の創作的関与が認められる場合には、その程度に応じて認められうるとされています。

Q. 作風を真似させるのは著作権侵害ですか?
A. 作風やアイデアそのものは著作権の保護対象ではないため、それだけでは侵害にあたらないのが原則です。ただし特定の作品の具体的な表現を感得できる場合は別で、他の法的観点が問題になる場合もあります。

Q. 企業で使う場合、何に気をつけるべきですか?
A. 指示文に実在する作家名や作品名を含めないこと、外部に出す制作物では既存作品との類似を確認すること、使用したモデルと指示文と修正過程を記録することの3点が基本です。

参考

文化庁「AIと著作権について」(「AIと著作権に関する考え方について」令和6年3月、「チェックリスト&ガイダンス」令和6年7月)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」(第1.1版 令和7年3月28日)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ai_network/02ryutsu20_04000019.html

用語の全体像はこちらで確認できます。
→ 今さら聞けないAI用語30選|初心者でもニュースが読めるようになる意味と読み方

この記事を書いた人:kkazuki|AI/DX分野ブログ運営者 → 運営者情報

タイトルとURLをコピーしました